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セイドレイ【完結】
第7章 絶望的観測

亜美は、重ねたティッシュで応急処置をし、健一の助手席に乗り込んだ。

ほどなくして、近くのドラッグストアに着く。

「あ…、万札しかねぇや。じゃ、ほら。これで買っておいで」

「あ、ありがとう…ございます」

健一に渡された万札を握り締め、店内に入る。
亜美は生理用品売場で迷わずにタンポンを選ぶと、レジに並んだ。

そのとき、ふと──。


(今なら…──)


逃げてしまえるのではないか──と、一瞬頭をよぎる。

逃げるだけならほかにもタイミングはあるはずだが、なぜかこのとき、強くそう思ったのだ。

握り締めた万札のせいかもしれない。
これっぽっちの金では、どこにも行けないことは分かっているはずなのに──。

「お待ちのお客様ー!こちらのレジへどうぞー!」

店員の声に、亜美はハッと我に返る。


(やっぱり私には…逃げる場所なんてない…──)


亜美は車へ戻り、健一にお釣りを渡す。

「ありがとうございました…」

「どういたしまして。…じゃあ、まずはそいつを突っ込んじゃうか」

「えっ…?」

「あ、今ここではやらないよ。それに俺、またムラムラしてきちゃったからさ…ちょっと場所移動しよっか」

「は、はい…」

タダでは終わらないとは思っていたものの、案の定である。
健一は車を走らせ、数キロ先にある公園に到着すると、亜美に車から降りるよう促す。

「ついてきて」

健一に言われるがまま辿り着いたさき──。
そこは、公園の敷地内にある公衆便所だった。

周囲の人目を気にしつつ、2人は多目的トイレに入る。

「…じゃ、さっそく」

健一は、亜美にスカートを履かせたまま、ショーツだけを脱がした。
応急のティッシュが、経血で赤く染まっている。


(あんまり見ないでっ……)


亜美は、紙袋からタンポンを取り出し健一に渡すと、中腰の姿勢になった。

すると健一はスカートをめくりあげ、膣口を覗き込む。

「いつも親父にタンポン入れさせてるの?悪趣味だよね、あの人も」

タンポンのアプリケーターを膣口にゆっくりと挿入していく健一。

「亜美さぁ…もし赤ちゃんできたらどうする?」

「えっ…──」

「…いやほら、このままだといつかできちゃうよね。確実に」

「……ハイ」

亜美は途端に涙を浮かべる。
健一のその言葉は、亜美の核心をつく鋭利なナイフのようだった。


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