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セイドレイ【完結】
第41章 愚かなる兆し
「…まぁ何にせよ、俺達も覚悟はしておかなきゃならない。いつ何がどうなるかは誰にも分かんねぇからな。新堂さんの気分次第では、俺もお前さんも簡単に首が飛ぶだろう。たとえ告発したところで、会員には公安、弁護士…そのほか錚々たる面子だしな。ただ……」
「…ただ?」
「…もし仮にあいつが…高崎がやろうとしてたことが何だったか分かったとして。…そのことが、俺やお前さんにとって都合が悪いことだったとしても…今みたいに、あいつのために涙を流せるか…?」
本山が言わんとしていることの意図を、田中は理解できた。
それはつまり、亜美のために罪を償えるか、ということだ。
「……はい。すっごく怖いし…できればこのまま逃げ切ってしまいたいと、心のどこかで思ってるっ……でも…でもっ……、それが…亜美ちゃんが本当に望んだことならっ…うっく…うぅぅ……すいません…」
田中は大粒の涙を作業服の袖で拭う。
そして涙こそ流さないものの、本山も田中と同じ心情であった。
「…とにかくだ。まだ今すぐどうこうなると決まったわけじゃない。いくら俺達が中途半端に動いたところで、亜美を余計に傷つけることになったら意味が無いしな。けっ…散々傷つけておいて勝手なもんだが。…とりあえず俺は、隙を見てあいつにもう一度聞いてみようと思う。それに正直、今のあいつがどんな心境なのかは全く分からん。まぁ、俺には何も教えてくれないかもしれんが…」
「…分かりました。じゃあ僕も……じっとしてるだけじゃアレなんで、ひとまず慎二さんと…亜美ちゃんについてちゃんと話をしてみようと思います。一応、僕らよりは亜美ちゃんのことを近くで見ていた人ですし……何か知っていることがあるかもしれない。他の…親父さんと長男さんが、今どうしているかも気になりますしね。だって………」
「………だって?」
「…だって、あんな子を…あんな亜美ちゃんみたいな女の子を知ってしまったら……きっともう、普通には生きられないと思うから。先生はそう思いませんか…?」
「……そうだな」
本山はひと言そう返すと、田中に挨拶をして部活の指導へと戻った。
「(普通には生きられない、か……)」
本山はその後も、心の中でその言葉を反芻していたーー。
「…ただ?」
「…もし仮にあいつが…高崎がやろうとしてたことが何だったか分かったとして。…そのことが、俺やお前さんにとって都合が悪いことだったとしても…今みたいに、あいつのために涙を流せるか…?」
本山が言わんとしていることの意図を、田中は理解できた。
それはつまり、亜美のために罪を償えるか、ということだ。
「……はい。すっごく怖いし…できればこのまま逃げ切ってしまいたいと、心のどこかで思ってるっ……でも…でもっ……、それが…亜美ちゃんが本当に望んだことならっ…うっく…うぅぅ……すいません…」
田中は大粒の涙を作業服の袖で拭う。
そして涙こそ流さないものの、本山も田中と同じ心情であった。
「…とにかくだ。まだ今すぐどうこうなると決まったわけじゃない。いくら俺達が中途半端に動いたところで、亜美を余計に傷つけることになったら意味が無いしな。けっ…散々傷つけておいて勝手なもんだが。…とりあえず俺は、隙を見てあいつにもう一度聞いてみようと思う。それに正直、今のあいつがどんな心境なのかは全く分からん。まぁ、俺には何も教えてくれないかもしれんが…」
「…分かりました。じゃあ僕も……じっとしてるだけじゃアレなんで、ひとまず慎二さんと…亜美ちゃんについてちゃんと話をしてみようと思います。一応、僕らよりは亜美ちゃんのことを近くで見ていた人ですし……何か知っていることがあるかもしれない。他の…親父さんと長男さんが、今どうしているかも気になりますしね。だって………」
「………だって?」
「…だって、あんな子を…あんな亜美ちゃんみたいな女の子を知ってしまったら……きっともう、普通には生きられないと思うから。先生はそう思いませんか…?」
「……そうだな」
本山はひと言そう返すと、田中に挨拶をして部活の指導へと戻った。
「(普通には生きられない、か……)」
本山はその後も、心の中でその言葉を反芻していたーー。