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セイドレイ【完結】
第41章 愚かなる兆し
亜美が、今一体どんな表情でそう言ったのか。
亜美の背後で後頭部を見つめる本山には、その表情を伺い知ることはできない。
しかし亜美は、はっきりと、小さいながらもどこか芯のある声で言ったのだ。
『これは私の子である』
とーー。
「…そもそも、私が望んだせいで今こうなってしまったんです」
「お前が…望んだせい…?」
「ええ。私が…お義父さまに、お義父さまの子供を産みたい、って言ったんです。だからお義父さまは、私に…こっそりと避妊薬を飲ませるようになった。そして、この地下室から私を解放しようとした。それを新堂さんに勘づかれて、あの日私は連れ去られ監禁されました」
その辺の事情は、本山も何となくは把握していた。
実際に亜美の監禁をほう助したのは、他ならぬ本山だからだ。
しかし、亜美がまさか自ら望んで、雅彦の子を宿したいなどと考えていたとは、思いもよらなかったのだ。
「私はもう…この家で生きて行こうって。お義父さま、健一さん、慎二さんと4人で暮らして行くと、あの時決めたんです。私が自由を望むことで、これ以上…関係の無い誰かを傷つけたくなかった」
関係の無い誰か、とは、恐らく貴之のことだろう。
本山は、胸を締め付けられるような感覚になる。
「…不思議ですよね。自分をレイプした男達と一緒に暮らしたいだなんて。でも…なんだろう。もう私は…ここまで汚れてしまったら私は……たとえこの家から出られたとして、どう生きていいのかも分からない、と思って。天涯孤独ですしね。それにもう、その頃にはセックスすることに抵抗なんてとっくに無くなってた…むしろ、どこかでそれを望んでいる自分すら居た。私の中に…そういう私を見つけてしまったんです。そのことが一番ショックだったかもしれません」
本山は何も言えなかった。
今はただ、少女の言葉に黙って耳を傾けることしかできなかった。
「ただあまりに疲れてしまって。どうやっても、もう元には戻れないから…。それなら、私はこの家の中で、一生あの人達だけのために、それと…いずれ産まれてくる子のためだけに生きて行こうって。そうしたいとか、そうするべきだ、とか…そういう感じじゃなくて……そうなる運命だったんだな、って。そう思ったら急に心のつかえが取れて…取れた気がして。たとえあんな形でも、誰かに求められることに安心したかったのかもしれませんね…」
亜美の背後で後頭部を見つめる本山には、その表情を伺い知ることはできない。
しかし亜美は、はっきりと、小さいながらもどこか芯のある声で言ったのだ。
『これは私の子である』
とーー。
「…そもそも、私が望んだせいで今こうなってしまったんです」
「お前が…望んだせい…?」
「ええ。私が…お義父さまに、お義父さまの子供を産みたい、って言ったんです。だからお義父さまは、私に…こっそりと避妊薬を飲ませるようになった。そして、この地下室から私を解放しようとした。それを新堂さんに勘づかれて、あの日私は連れ去られ監禁されました」
その辺の事情は、本山も何となくは把握していた。
実際に亜美の監禁をほう助したのは、他ならぬ本山だからだ。
しかし、亜美がまさか自ら望んで、雅彦の子を宿したいなどと考えていたとは、思いもよらなかったのだ。
「私はもう…この家で生きて行こうって。お義父さま、健一さん、慎二さんと4人で暮らして行くと、あの時決めたんです。私が自由を望むことで、これ以上…関係の無い誰かを傷つけたくなかった」
関係の無い誰か、とは、恐らく貴之のことだろう。
本山は、胸を締め付けられるような感覚になる。
「…不思議ですよね。自分をレイプした男達と一緒に暮らしたいだなんて。でも…なんだろう。もう私は…ここまで汚れてしまったら私は……たとえこの家から出られたとして、どう生きていいのかも分からない、と思って。天涯孤独ですしね。それにもう、その頃にはセックスすることに抵抗なんてとっくに無くなってた…むしろ、どこかでそれを望んでいる自分すら居た。私の中に…そういう私を見つけてしまったんです。そのことが一番ショックだったかもしれません」
本山は何も言えなかった。
今はただ、少女の言葉に黙って耳を傾けることしかできなかった。
「ただあまりに疲れてしまって。どうやっても、もう元には戻れないから…。それなら、私はこの家の中で、一生あの人達だけのために、それと…いずれ産まれてくる子のためだけに生きて行こうって。そうしたいとか、そうするべきだ、とか…そういう感じじゃなくて……そうなる運命だったんだな、って。そう思ったら急に心のつかえが取れて…取れた気がして。たとえあんな形でも、誰かに求められることに安心したかったのかもしれませんね…」