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セイドレイ【完結】
第41章 愚かなる兆し
「…先生も、思うでしょ…?私、多分普通じゃない。普通の女の子なら、きっとこんな風には考えない。あんなことされて、感じたりなんかしない」

「そっ…それは……で、でもっ、それはお前が悪いわけじゃっ…ないじゃないか……」

「…ふふ。先生今日は優しい。…でも勝手だよ。だってみんな、お前のせいだ、って…お前が淫乱だからって。私がこんなカラダをしてるのが悪いんだ、って……先生も言ってたじゃん」

「ぐぐっ……いや、それはあれだっ、何だ?そのっ…そういうプレイってやつだろ?すっ、少なくとも先生はそうだぞ…うん……多分……」

「…あははっ。冗談です。先生、今日は本当にどうしちゃったの…?」

その言葉を、そっくりそのまま返したい、と本山は思っていた。
こんな風に冗談を言って笑う亜美が、亜美の中にまだ残っていることが、ひどく切なく、やりきれなかった。

「…でも、ね。じゃあこの子を産みたい、ってなると…それはやっぱりさすがに、普通とは言えないんじゃないかなぁ…って…」

「高崎………」

「自分でも、めちゃくちゃなこと言ってるな…って思います。でも……そう思っちゃった。だってこの子ともう…ずっと一緒に過ごしてるから。私は…パパとママが死んでから、ずっと一人だった。毎日誰の腕の中に居ても…ずっと。でも今は違う。私はこの子とつながってる。そう思える。それに、私のママも………」

「…お前の母ちゃん?」

「はい。私はパパと…血が繋がってない。ママはパパじゃない別の男の人と…私を作ったんです。パパが無精子症だと知りながら。パパはそれを分かった上で、私に精一杯の愛情を注いでくれた。でもママは…私にはママの気持ちが、どうしても理解できなかった。どうしてそこまでして、って……」

本山はようやく、先程の亜美の質問の意図を汲み取る。
バラバラのパズルのピースが、少しずつ嵌合していくようだ。

「…でも、今なら何となく…分かる気がするんです。もちろん、ママはレイプされて妊娠したわけじゃないだろうけど……それでも何となく」

女には、それが自分の子である、という絶対的な実感があるのだ。
たとえ子種が誰のものであろうと、自分の遺伝子を半分宿した、その命にーー。

「…それに、この子を私が否定してしまったら…それは、私自身が生まれたことを否定することになると…そう思ったんです」
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