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セイドレイ【完結】
第42章 原風景
「うんとね…まぁ、色んな選択肢の中から多数決で、とはなってたんだけど…結局のところは、産むのか堕ろすのか、の二択にはなるよね?」

「はい…そうですね…」

「…で、やっぱりさぁ、みんなボテ腹の亜美を見たいっていうのは共通の意見だったから、ある程度お腹が目立つまでは様子を見よう、とはなってたんだけど…」

大の大人達が、亜美の腹の子の処遇を巡って話し合っている光景を思い浮かべてみる。
きっと、下劣な笑いに湧いたりしていたのだろう。

「でも、パパも含めてほとんどの会員達は、最終的には堕胎させよう、って意見で一致してたんだ。だって、産まれちゃったら色々面倒くさいじゃん?実際問題、その子を誰がどうやって育てて行くのかとかさ」

「めんど…くさい……。そう…ですか……」

「そもそも、産ませるなんて選択肢があるなんて誰も想像してなかったんだよ。新堂さんも最初はそんなこと一言も…言って無かったし。できちゃったらできちゃったで、産科医が居るからちゃちゃっと堕ろせますよ~、だから好きなだけ孕ませセックスしていいですよ~って言われて、俺達高い金払って会員になったんだしさ」


今更もうそんなことを言われて感情を取り乱すほど、亜美は脆くは無い。
この一年と数ヶ月の間に、度重なる陵辱に耐え、大切なものを全て奪われてきたのだ。
しかしながら、こうしてあからさまに言葉によって男達の薄汚い欲望に晒されると、哀しみや怒りを通り越して、虚しさだけが残る。

人の命までをも弄ぶ鬼畜集団。
人の皮を被った悪魔達の所業。

まだ産声を上げていないとは言え、今腹の中で胎動するそれは紛れもなくひとつの平等な生命のはず。
産む/産まないの是非は置いておくとして、こんな男達の気まぐれによって命の選別がされようとしている事実が、ただただ恐ろしかった。

「他にも、女の子だったら産ませてみる~とか、そんな意見もあったなぁ。後はみんな、堕ろした直後にさっそく次の種付けしたいとか言って盛り上がってたよ。みんな変態だよなぁ?パパはまぁ…これからも亜美とセックスできればなんでもいいんだけどさっ。それに、錚々たる面子が増えすぎて、パパなんかもう会員の中じゃ底辺だから、発言力も無いし。これでも一応、記念すべき会員番号一番なのに…ま、新堂さんのよしみで声掛けてもらっただけでも感謝しないとね~」
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