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セイドレイ【完結】
第42章 原風景
亜美は思わず腹に手を当てる。

もしかしたら腹の子は、今目の前でこんなことを言う男の遺伝子を半分引き継いでいるかもしれない…と思うと、産むという選択をしてしまったのはあまりに利己的ではないのかと、自分自身に問うてみたくなる。

ーーだとしても。

「…ま、とにかくさ。亜美が産みたいって言うんなら、パパは賛成だからね。あの新堂さんが反対してない時点で、他の会員達も概ね了承したみたいだよ。俺達には一切責任とかは問わないって約束もしてくれたしさ。新堂さんのことだから、きっと何か考えがあるんだよね?…パパとしては、どうせなら早く産まれて欲しいな~って思ってるけど」

「…どうしてですか?」

「ん~?だってさ、そしたらまた亜美を孕ませられるじゃん?今のボテ腹亜美も悪くないけど、パパはやっぱり…女子高生の亜美が好きだからさっ。もうリアルJKじゃ無いのがちょっとだけ残念だけど。やっぱり、妊娠のリスクがあるセックスが一番興奮するんだよぉ~。できちゃったかな?大丈夫かな?生理来ない??みたいなさ。ドキドキするだろ?それでも、パパのおチンポが大好きな亜美は、中出しセックスをせがんじゃう、っていうのがたまらないんだよなぁ~」

呆れてものが言えない、とはこういうことなのだろう。
もしかしたら、最近訪れる頻度が減っていたのは、多忙からでは無くそれが理由なのかと勘繰りたくなる程に。

亜美はこの男に、哀れみさえ覚えてしまう。

娘である千佳が、こんな父親の顔を知ったら一体どうなってしまうのだろうかと考える。
きっと、自分にその血が流れていることを嫌悪するのではないだろうか。

「そ、そういえば……千佳ちゃんはお元気ですか?」

話題を変えたくなった亜美は、千佳の名前を口にする。
どちらかと言えば、あまり知りたくないことだった。
しかし、こんな低俗な話に相槌を打っているよりはいくらかマシだろう、そう思ってのことだった。

「…ああ。千佳?千佳はねぇ…どうやら最近、男ができたらしくてさっ。急に色気づいちゃって…ますます生意気さに拍車がかかってるよ。まぁ、パパには亜美っていう娘が居るからいいんだけどさ」

「そっか…千佳ちゃん、彼氏が…。良かった…ですね…」

亜美は何故かこの時、貴之の顔を思い浮かべてしまう。

記憶の底に沈めていた、かつての恋人の顔だった。
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