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セイドレイ【完結】
第42章 原風景
(私は…母親には……なれない…の?)

これまで散々、男達には罵詈雑言を浴びせられて来た。
それは、当時15歳の少女の繊細な心をボロボロに踏みにじるものだった。
抗うことに疲れた少女は、諦めという名の自己防衛手段で現実から逃避を図ろうとするが、自我というものは簡単には消え去ってくれなかった。

やがて、少女は自分の運命を受け入れた。
決して暴力に屈したわけでは無い。
それは、絶望の果てに少女が見出した、たったひとつの悲愴な決意に他ならなかった。

これでいい。
本当にそう思っていた。
失くしたものはもう数えない。

罵られ、蔑まれ、自身が堕落していく過程こそが耽美であると、カラダを支配する快感に人生を委ねたのだ。

肉欲にまみれたこの世界で、女として生きていく。

16歳になった少女は、そう決意していた。

それは何故か。
もう、何も守るものが無かったからだ。
これ以上、失うものが無いからこその決断だった。

しかし、少女は気づいてしまう。

再び、守るものが生まれようとしていることに。



「…さっきはごめんねっ?パパ、ちょっと別のことでイライラしてて…亜美に酷いこと言っちゃったかも…気にしなくていいからね?たまにはああいうプレイも亜美が喜ぶかなぁって思ってさ。いっぱい中出ししたらスッキリしちゃった。亜美もそうでしょ?もしかしてまだ物足りないかなぁ…?でもパパ今日はもう行かなくちゃいけないんだ…」

ベッドの上で仰向けで放心状態になっている亜美に、新垣がネクタイを締めながら一方的に話しかけている。

新垣が苛立ちに任せて放った二発分のザーメンは膣口から垂れ流れ、シーツを汚していた。

「…あれぇ?もしかして失神でもしちゃったかな??久々のパパのおチンポがそんなに良かったのかぁ…なーんてね。またなるべく時間作って来れるようにするからさ。それまで我慢できる?次は久々にブレザー着た亜美とエッチしたいから、もう産まれちゃってるといいなぁ…はは。じゃ、パパそろそろ行くね?」

地下室の扉が閉まる音がする。

亜美は失神などしておらず、ベッドに寝転がったままぼう然と虚空を見つめていた。

(私は…母親には…なれない……?)

その言葉が呪文のように、繰り返し頭の中を巡る。

「……あっ」

すると、まるでその問いに答えるかのように、腹の中の子が胎動を起こしたのだったーー。
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