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セイドレイ【完結】
第43章 箱庭
こうして昼間のビジネス街を眺めていると、絶えず人がどこかからやって来ては、またどこかへ消えて行く。

慎二が部屋に引きこもっていた間にも、常に世間はこうして慌ただしく回っていたのだと思うと、俄に信じ難い。

「…あーもうやめたやめたっ!ちっくしょう…どうして俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ…俺の仕事は亜美のご主人様だったはずなのに…」

そんなことを口に出してみても、ただ虚しさが残るだけだった。
改心したように思えた慎二の中に、再び卑屈な精神がふつふつと湧き上がってくる。

亜美の助言を元に、ひとまず家庭教師のアルバイトにも応募してはみた。
こんな慎二であっても、高校までの学歴は申し分無いのだ。
空白期間については、医学部を受験するために浪人していたことにした。

それについては概ね理解してもらえたようだったが、家庭教師という未成年と関わる職種において、彼の容姿は歓迎されるものでは無かった。

『生徒さんの中には多感な時期の女の子も多いので…』

などと、遠回しに慎二の見た目について難色を示されて終わりだった。

キモい。
オタク。
デブ。

あくまで世間一般から押し付けられたそれらの印象。
そんな三重苦を背負ってしまった彼は、一体これから自分が社会とどう接点を持てばいいか分からなかった。

更に、慎二の中に元々あるプライドの高さが、職種を選り好みさせていることも、事態がうまく運ばない要因のひとつだった。

締め切った部屋で、亜美と二人だけの世界に生きていた頃に戻りたかった。
まさに『多感な時期の女の子』だった亜美。
そんな少女が最も忌み嫌うであろう、倒錯しきった性癖をなんの躊躇いも無くぶつけていた日々。

そんな楽園での生活が終焉を早めたのは、他でもなく自分自身の行いによるものだ。


そうこうしていると、慎二のスマホへまた一通のメールが届く。

「…なんだ?どーせまたお祈りメールだろ…」

そう言いながら渋々メールを開封すると、意外なことにその宛先は父である雅彦からだった。

「…親父?なんだろ。しかも兄貴にも同じメールが飛んでる…」

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ワシだ。
お前たち、元気でやっているか?
直接会って話したいことがある。
都合の良い時を教えてくれ。

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