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セイドレイ【完結】
第43章 箱庭
その頃、武田クリニックの近くにある中華料理屋にて、貴之を含めた3人は昼食を取っていた。
「はぁ~食った食った!武田さんのお陰で今日はちょっと贅沢できたなぁ~」
爪楊枝を口に咥えながら、でっぷりと出た腹を豪快に叩く親方。
「…これって明日も飯代もらえる感じなんすかね?」
「先輩…そんながめついこと言うとみっともないっすよ…」
村尾と貴之がそんな会話をしていると、そこへ親方が口を挟む。
「そういやお前…こんなに暑いのに朝からマスクしてたが…風邪でも引いたのか?見てるこっちが暑苦しいからやめてくれよ~」
「こいつきっと、風俗行き過ぎて変な病気もらって来たんすよ」
「ちっ、違いますって…!ちょっと喉の調子が…悪いだけっす…」
「だーかーらー、それが変な病気っつってんだろ?はははっ」
今週からいよいよ、武田クリニックとその屋敷の剪定作業に入った貴之は、朝から落ち着かない時間を過ごしていた。
この真夏日の中、貴之がマスクを装着して仕事をしている理由は、他ならぬ「顔バレ」を防ぐためだ。
幸い、朝に雅彦が挨拶に来た時、貴之は車から道具を下ろしている時で、直接顔を合わすことは無かった。
親方は新入りの貴之に挨拶をさせようとしたが、雅彦は診療が始まるということでそれを断り、すぐ病院へと戻って行った。
これから予定では約一週間、あの場所で作業をする。
見積もりでは病院側の方に多めに工数を取っていたが、屋敷の庭も何かと荒れており時間が掛かりそうだ。
まずは病院側を終わらせた後、屋敷の庭へと作業を移す。
とりあえず半日作業をしたが、屋敷から誰かが出てくるような気配は無い。
貴之が以前、亜美に学校の書類を届けた時に出迎えてくれた家政婦の内藤も辞めたとのことだ。
他、長男である健一はそもそもあの屋敷には住んでいないことを考えると、あの屋敷に居るのは引きこもりである次男の慎二か…と、まさか新堂の手によって武田家が一家離散にまで追い込まれていることを知らない貴之は思っていた。
別に、自分は何も悪いことはしていない。
わざわざあの屋敷に忍び込むためにこの仕事を選んだわけでもないのだ。
それでも、あの家の住人に顔を合わすのは憚られたし、下手な勘ぐりをされて亜美に迷惑をかけてもいけないと、貴之は考えていた。
しかし気になるのは、やはり亜美のことだ。
「はぁ~食った食った!武田さんのお陰で今日はちょっと贅沢できたなぁ~」
爪楊枝を口に咥えながら、でっぷりと出た腹を豪快に叩く親方。
「…これって明日も飯代もらえる感じなんすかね?」
「先輩…そんながめついこと言うとみっともないっすよ…」
村尾と貴之がそんな会話をしていると、そこへ親方が口を挟む。
「そういやお前…こんなに暑いのに朝からマスクしてたが…風邪でも引いたのか?見てるこっちが暑苦しいからやめてくれよ~」
「こいつきっと、風俗行き過ぎて変な病気もらって来たんすよ」
「ちっ、違いますって…!ちょっと喉の調子が…悪いだけっす…」
「だーかーらー、それが変な病気っつってんだろ?はははっ」
今週からいよいよ、武田クリニックとその屋敷の剪定作業に入った貴之は、朝から落ち着かない時間を過ごしていた。
この真夏日の中、貴之がマスクを装着して仕事をしている理由は、他ならぬ「顔バレ」を防ぐためだ。
幸い、朝に雅彦が挨拶に来た時、貴之は車から道具を下ろしている時で、直接顔を合わすことは無かった。
親方は新入りの貴之に挨拶をさせようとしたが、雅彦は診療が始まるということでそれを断り、すぐ病院へと戻って行った。
これから予定では約一週間、あの場所で作業をする。
見積もりでは病院側の方に多めに工数を取っていたが、屋敷の庭も何かと荒れており時間が掛かりそうだ。
まずは病院側を終わらせた後、屋敷の庭へと作業を移す。
とりあえず半日作業をしたが、屋敷から誰かが出てくるような気配は無い。
貴之が以前、亜美に学校の書類を届けた時に出迎えてくれた家政婦の内藤も辞めたとのことだ。
他、長男である健一はそもそもあの屋敷には住んでいないことを考えると、あの屋敷に居るのは引きこもりである次男の慎二か…と、まさか新堂の手によって武田家が一家離散にまで追い込まれていることを知らない貴之は思っていた。
別に、自分は何も悪いことはしていない。
わざわざあの屋敷に忍び込むためにこの仕事を選んだわけでもないのだ。
それでも、あの家の住人に顔を合わすのは憚られたし、下手な勘ぐりをされて亜美に迷惑をかけてもいけないと、貴之は考えていた。
しかし気になるのは、やはり亜美のことだ。