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セイドレイ【完結】
第43章 箱庭
その後も順調に作業は進み、ほぼ予定通り病院側の剪定は終了した。
3日間、病院の外周を作業し、用を足すのに屋敷のトイレを利用したが、これと言って特筆すべきことは無かった。

雅彦は2日目以降も毎朝挨拶に訪れては昼食代を渡してくるのだが、その時は貴之も意図的に雅彦と顔を合わさないようにしていることもあり気づかれてはいない。

強いて言うならば、菅原が何かと話しかけてくるくらいだろうか。
造園に興味でもあるのか、はたまたただの暇つぶしなのか。
その度に、親方をはじめ貴之と村尾に向けられる『妙な眼差し』が若干気色悪くはあったのだが、気のせいだろう。

初日こそ、武田家の敷地に足を踏み入れることに緊張していた貴之だったが、それは杞憂だったのかもしれない。

いや、がっかりと言った方がしっくりくるかもしれない。
拍子抜けとも、期待はずれとも言える。

結局のところ、貴之は何かを期待していたのだと気づく。
あすかが言ったように、自分と亜美の間には離れられない運命があるのでは無いかと少しだけ思っていた。
あすかの言葉を借りるならば、そんな『呪い』にかかってみたかったのかもしれない。

しかし、蓋を開けてみれば、現実はこんなものだ。
ここには亜美はおろか、その手掛かりになり得そうな痕跡も無い。

このまま予定通りに仕事をすべて片付け、来週からはまたいつもの日常に戻るのだと、貴之はほんの少し肩を落としていた。


そして4日目。
この日から、屋敷の庭の剪定作業に入る。

さながら日本庭園のような広々とした庭に、樹木や盆栽が立ち並ぶ。
そのどれもが長く手入れをされておらず、またこの春から夏にかけて生い茂った雑草が風情を台無しにしていた。

放置されると、庭も人も荒れすさぶものなのだろうかと、貴之はついもの思いに耽ってしまう。

「さーてとっ!今日もおっぱじめるか~」

親方の声を皮切りに、作業がスタートした。

草刈りを命じられた貴之は、黙々と刈り進めて行く。

そして間もなく10時の休憩を迎えるという時。

「…すまんっ!しょんべんちびっちまいそうだ…便所行ってくるからお前も適当なとこで切り上げて休憩取ってくれ!」

親方がそう言って、小走りで屋敷の中へ入って行く。

「…ふう、じゃあ俺らも休憩にすっか」

「はーい…」

残された貴之と村尾は地べたに座り、水筒のお茶で喉を潤す。
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