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セイドレイ【完結】
第43章 箱庭
「…しっかし親方、小便近くて笑えるよな」

「あー確かに。割と頻繁に行ってますよね」

「歳だからしゃーねーな。あれが頻尿ってやつだよ。はぁ…俺らもいつかはああなってくんだぜ?そのうちチンコも勃たなくなって…歳は取りたくねぇよな」

「…そういえば親方っていくつなんすか?」

「あ?うーんと確か…50ちょいじゃ無かったっけ」

「実際…そのくらいの歳の人って、勃つもんなんすかね?」

「いやぁ…どうだろ。人によるんじゃねえの?なんだよお前、もうそんな歳から心配してんのか?お前はまだまだ大丈夫だよ。この風俗狂いが!」

「ちょっ…ま、否定はしないっすけどね…」

貴之はこの時、ふと雅彦のことを思い浮かべていた。
亜美の話によれば、雅彦は確か還暦を迎えていたはず。
そしてその歳になっても『まだまだ元気』だと、あの日最後に公園で会った亜美は言っていた。

男とは、いくつになっても下半身に突き動かされるものなのだろうか。
貴之は自分が雅彦の歳になった時、45歳下の少女に欲情し、手を掛けてしまうのでは無いかと思うと恐ろしかった。
今でさえ、股間の疼きに悶々とする辛い日々を送っているというのに、それがあと45年続くかもしれないのだ。考えただけで気が滅入りそうになる。

普通の人の、普通の感覚とは、一体どのくらいのものなのだろう。
もし亜美に出会わず、未だ童貞だったとしたら。
もしくは初体験が別の女性だったとしたら。
それでも同じように、自分はこんな煩悩にまみれた人生を送っていたのだろうかと、貴之は考えていた。

そして、ひと度そんなことを考え始めると、貴之の股間は即座に膨張を始める。
我慢のリミットがたった2時間弱で訪れているようでは、この先の人生が思いやられる。

パニック障害で世話になっている精神科の医師に相談してみた方が良いのかもと、ここ最近は真剣に考えるようになっていた。

ともかく、今はこうしてその場しのぎをして日々を乗り越えて行くしかないのだ。


「…それにしても親方、ちょっと遅くね?」

トイレに行ったまま戻らない親方を村尾が気にする。

「確かに…いつも一瞬で戻ってきますよね。俺もトイレ行きたいんだけどな…どうしよ」
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