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セイドレイ【完結】
第43章 箱庭
こんなことが現実にあるのなら、むしろお礼を言いたいのはこちらの方だと、村尾は思う。

村尾も親方と同じように、外仕事のためか肌は黒々と焼けていた。
しかしそのカラダは筋肉質で引き締まっており、ソフトマッチョとでも言うべきか。

暑さ対策のためか頭に白いタオルを巻いており、その顔立ちはよくよく見てみると非常に男前だ。
滴る汗にも、どこか爽やかな野性味を感じさせる。

如何にも女垂らしそうで、やんちゃな雰囲気。
そんな形容がふさわしい。

このタイプは、亜美の客の中には居ない。
どれも私腹を肥やしているのがそのまま体型に出ているか、もっと屈強な男達ばかりだった。

強いて言うならば村尾は、かつての恋人である貴之に近いものがあるが…あくまで強いて言うならばの話であり、野球で鍛え上げられた貴之の体幹と比べてみると、村尾はもっと線が細い。

亜美は思わず、自分が男に対してまるで『値踏み』のようなことをしてしまっていることにハッとする。

(でもこの人も…男の人はみんな同じだから……)


「…後々…面倒なことにはなったりしない…よな?」

村尾は口ではそう警戒する素振りを見せながらも、その股間は作業ズボンの上からでもはっきりと分かる程に膨張している。

「…はい。大丈夫ですよ。これが私の…仕事みたいなものですから。親方様も…楽しんでいただけたようですし。すごく…お元気でいらして……」


仕事。
たまたま剪定に来た庭師の性処理がこの女の仕事だというのか。
村尾はそう訝しむも、どうしてかその女が嘘を言っているようにも思えなかった。

頭では理性がこの状況の危険性を警告しているのに、カラダは今すぐにでもその女を押し倒したい衝動に駆られている。

何より、あの親方がーー。
たまに飲み屋に行く程度で女遊びは満足していたような親方が、この現実を受け入れたのだ。

年長者の言うことは素直に聞いておくべきだろうと、村尾は本能に従うことにした。


「…しょ、しょんべん……飲んでくれるんだって…?」

「…はい。ここはトイレですし。お兄さんも、そのためにここへいらしたんですよね…?」

すると亜美は、慣れた手つきで村尾のベルトのバックルを外すと、ファスナーのスライダーを歯で噛んで下へ下ろして行く。

こんな細かな所作にすら、亜美が普通の女では無いことが表れていた。
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