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セイドレイ【完結】
第44章 鏡

菅原には、双子の妹が居る。
幼き頃は、まるで写し鏡のように同じ容姿を有したその妹と、仲睦まじく生活していたように思う。
しかし、中学受験を意識し始めた頃から、両親は菅原に対して厳しい態度を取るようになる。
菅原の父は産婦人科を経営する医師であり、長男である彼に何としてでも後を継いで貰わなければいけない為だ。
一方で妹の方はというと、両親からめっぽう甘やかされていた。
特に父親はそれが顕著で、受験勉強に明け暮れる菅原には異様なまでの厳しさで接する反面、妹には好きなものを何でも買い与え、行きたい場所はどこへでも連れて行った。
そんな兄妹間での"格差"が、思春期を迎えた菅原に暗い影を落として行く。
元は、瓜二つの造形をした兄と妹。
そんな2人は、性別という隔たりによって明暗を分けた。
両親が長男である菅原に期待をかけ、敢えて厳しく育てたのは仕方ないことかもしれない。
遊びもせずに勉学に励もうとも、両親は彼を褒めることすらせず、寧ろもっと上を目指せと叱咤をするだけ。
その真横で、両親の愛情を一身に受け、蝶よ花よと育てられている妹に対して、菅原はいつしか憎悪を抱くようになる。
妹に、というよりは、「女」というものに。
そして、「男」に生まれてしまった、自分自身に。
気がつけば2人は見た目にも、性別由来の特徴が色濃く現れ始めた。
もはや2人の間に「お揃い」のものなど、何も無くなっていた。
かつてはお揃いだったはずの、両親からの愛情も含めて。
そんな折、妹が下校途中に集団強姦の被害に遭う。
犯行グループは4人。
その手口は、人通りの少ない道で被害者を無理矢理車へと連れ込み、集団で暴行を働くというもの。
既に、付近で立て続けに同様の被害が報告されており、警察も警戒を強めていた最中に起きてしまった事件だった。
奇しくも、菅原の妹が被害に遭ったことで犯人らは逮捕されたのだが…妹が心身に負った傷は、到底癒えるものでは無かった。
それまで、自分の幸せな人生に何の疑いも持っていなかった妹。
それが一瞬にして、何もかも全て奪われたのだ。
そう、まさにそれはーー、
両親を亡くし、武田家に引き取られて来た亜美と同じように。
幼き頃は、まるで写し鏡のように同じ容姿を有したその妹と、仲睦まじく生活していたように思う。
しかし、中学受験を意識し始めた頃から、両親は菅原に対して厳しい態度を取るようになる。
菅原の父は産婦人科を経営する医師であり、長男である彼に何としてでも後を継いで貰わなければいけない為だ。
一方で妹の方はというと、両親からめっぽう甘やかされていた。
特に父親はそれが顕著で、受験勉強に明け暮れる菅原には異様なまでの厳しさで接する反面、妹には好きなものを何でも買い与え、行きたい場所はどこへでも連れて行った。
そんな兄妹間での"格差"が、思春期を迎えた菅原に暗い影を落として行く。
元は、瓜二つの造形をした兄と妹。
そんな2人は、性別という隔たりによって明暗を分けた。
両親が長男である菅原に期待をかけ、敢えて厳しく育てたのは仕方ないことかもしれない。
遊びもせずに勉学に励もうとも、両親は彼を褒めることすらせず、寧ろもっと上を目指せと叱咤をするだけ。
その真横で、両親の愛情を一身に受け、蝶よ花よと育てられている妹に対して、菅原はいつしか憎悪を抱くようになる。
妹に、というよりは、「女」というものに。
そして、「男」に生まれてしまった、自分自身に。
気がつけば2人は見た目にも、性別由来の特徴が色濃く現れ始めた。
もはや2人の間に「お揃い」のものなど、何も無くなっていた。
かつてはお揃いだったはずの、両親からの愛情も含めて。
そんな折、妹が下校途中に集団強姦の被害に遭う。
犯行グループは4人。
その手口は、人通りの少ない道で被害者を無理矢理車へと連れ込み、集団で暴行を働くというもの。
既に、付近で立て続けに同様の被害が報告されており、警察も警戒を強めていた最中に起きてしまった事件だった。
奇しくも、菅原の妹が被害に遭ったことで犯人らは逮捕されたのだが…妹が心身に負った傷は、到底癒えるものでは無かった。
それまで、自分の幸せな人生に何の疑いも持っていなかった妹。
それが一瞬にして、何もかも全て奪われたのだ。
そう、まさにそれはーー、
両親を亡くし、武田家に引き取られて来た亜美と同じように。

