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セイドレイ【完結】
第44章 鏡

亜美はベッドから立ち上がると、揉み合いになっている新堂と菅原を横目に、扉へと駆け出して行く。
今なら外側から鍵がかけられていない。
これまでも、逃げようと思えばいくらでも逃げるタイミングはあったが、その度に、汚れてしまった自分にもう逃げ場所など無いと思い留まった。
しかし、今は違う。
亜美のカラダは、もう亜美一人のものでは無い。
これから産声を上げんとする、まだ小さいが確かに息づいているその生命を、その人生を護らなければならない。
絶望の中、たったひとつ希望の光を見せてくれたその我が子をーー。
亜美は走った。
腹の子を庇いながら、それでも走った。
理屈では無い。
肉体がそうしろと叫んでいた。
後先のことはどうでもいい。
今、何としてでもこの瞬間を乗り越えなければならない。
一瞬の刻が、まるでスローモーションかの如く感じる。
亜美は、新堂と菅原が争う声を背中に受けながら、ついに地下室の扉からその外に出た。
あとは、この先にある階段を昇り地上へ出たら、一心不乱に走って振り切るだけだ。
自分と、我が子を弄ぶこの運命からーー。
「...きゃっ!!??」
次の瞬間、亜美は何かにぶつかり思わず短い悲鳴をあげる。
脇目も振らず走っていた亜美の前に、突如立ちはだかる壁。
すぐ目の前に、自由へと続いている階段があると言うのに。
亜美はほんの少し後ずさりをして、進路を塞いだその壁を恐る恐る見上げる。
それは、人の形をしていたーー。
「...よぉ。久しぶりだな。俺の可愛い便器ちゃん...?」
「あっ.....あっ...あぁっ.........イヤ.....」
亜美はカラダを強ばらせ、声の主を見上げたまま硬直する。
「...そんな顔すんなって。せっかくご主人様が久々に会いに来てやったのに.....もっと泣いて喜べよ。あ?このメス豚が...よっ!」
男はそう言い放つと、握り締めた拳で亜美の頬を殴打する。
圧倒的な体格差のある男に殴られ、亜美の小柄なカラダはいとも簡単に吹き飛び、床に倒れ込む。
「.....うっ.....うぅぅ.....イタ...いっ.....」
亜美は殴打された頬に手を当てながら、床にうずくまった。
あまりの痛みに涙が零れ出る。
亜美の決死の逃走を阻んだのは、酒井だった。
今なら外側から鍵がかけられていない。
これまでも、逃げようと思えばいくらでも逃げるタイミングはあったが、その度に、汚れてしまった自分にもう逃げ場所など無いと思い留まった。
しかし、今は違う。
亜美のカラダは、もう亜美一人のものでは無い。
これから産声を上げんとする、まだ小さいが確かに息づいているその生命を、その人生を護らなければならない。
絶望の中、たったひとつ希望の光を見せてくれたその我が子をーー。
亜美は走った。
腹の子を庇いながら、それでも走った。
理屈では無い。
肉体がそうしろと叫んでいた。
後先のことはどうでもいい。
今、何としてでもこの瞬間を乗り越えなければならない。
一瞬の刻が、まるでスローモーションかの如く感じる。
亜美は、新堂と菅原が争う声を背中に受けながら、ついに地下室の扉からその外に出た。
あとは、この先にある階段を昇り地上へ出たら、一心不乱に走って振り切るだけだ。
自分と、我が子を弄ぶこの運命からーー。
「...きゃっ!!??」
次の瞬間、亜美は何かにぶつかり思わず短い悲鳴をあげる。
脇目も振らず走っていた亜美の前に、突如立ちはだかる壁。
すぐ目の前に、自由へと続いている階段があると言うのに。
亜美はほんの少し後ずさりをして、進路を塞いだその壁を恐る恐る見上げる。
それは、人の形をしていたーー。
「...よぉ。久しぶりだな。俺の可愛い便器ちゃん...?」
「あっ.....あっ...あぁっ.........イヤ.....」
亜美はカラダを強ばらせ、声の主を見上げたまま硬直する。
「...そんな顔すんなって。せっかくご主人様が久々に会いに来てやったのに.....もっと泣いて喜べよ。あ?このメス豚が...よっ!」
男はそう言い放つと、握り締めた拳で亜美の頬を殴打する。
圧倒的な体格差のある男に殴られ、亜美の小柄なカラダはいとも簡単に吹き飛び、床に倒れ込む。
「.....うっ.....うぅぅ.....イタ...いっ.....」
亜美は殴打された頬に手を当てながら、床にうずくまった。
あまりの痛みに涙が零れ出る。
亜美の決死の逃走を阻んだのは、酒井だった。

