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セイドレイ【完結】
第45章 男達の晩夏
「(ここに...亜美の全てが...)」

トメから手渡されたスマホの電源を入れた貴之。
いざ、その中身を見るとなると緊張で手が震える。

しかし、もう目を逸らさないと決めた。
何より亜美が、これを貴之に託したのだ。
そこにはきっと、何か意味があるはずーー。

「...トメさん、ありがとう。ずっとこれを守ってくれて...亜美の代わりに、俺からお礼を言わせてください」

「...いいえ。お安い御用じゃよ。あの日、道で倒れてた私を亜美ちゃんは助けてくれてねぇ。家に上がって傷の手当をしてくれたんじゃが...その時、亜美ちゃんが急にワーワー泣き出してねぇ...」

「...そう...だったんですか」

「...寂しい、ひとりぽっちだ、って。あんな可愛らしい子が、どうしてあんな...哀しい顔をせにゃならんのかと、やり切れなくてねぇ。あの子は周りに愛されるはずの子じゃ。なのに...誰が一体、亜美ちゃんを泣かせているのか。確かに両親を一度に失ったのは本当に気の毒じゃが...それを周りが支えてやらなきゃならんのに...私ゃ何もしてやれんかった。あんなに素直で優しい子に.....」

「そんなこと無いですよ...亜美はきっと、トメさんに感謝していると思います。それに...何もしてやれなかったのは俺の方です。あんなに近くに居たのに...何も気づいてやれなかった.....」

「...さ、亜美ちゃんが待っているんだろう?早くそれを届けてやりな」

「あっ...えっと........はい。本当に、本当にありがとうございました。またいつか...亜美と2人でトメさんに会える日が.....」


『ピーンポーン♪』


その時、玄関のチャイムが鳴る。

「...おや?誰かしら...今日はお客さんが多い日だねぇ。ちょっと出てくるから、待ってておくれ...」

トメはそう言って、玄関へ向かって行った。

一人居間に残された貴之は、ふと窓の方に目をやる。

白いレースのカーテン越しに、数人の人影が見えた。

「(あんなに何人も...誰なんだろ...?)」

気になった貴之は、カーテンの隙間から玄関先を覗き見る。
するとそこにはーー、

「お、おい...嘘だろ...??ちょっと待て、どうしてあいつらがここにっ...?!」
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