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セイドレイ【完結】
第46章 日記
気がつけば空は白み、すっかり朝になっていた。

夜通し亜美の日記と、その他スマホの中に残されたデータの確認に没頭していた貴之は、蝉の鳴き声と共にふと我に返る。

日記のほか、亜美がスマホを手にするまでに起こった事がまとめられたテキストや、SDカードの中にも大量のデータがあった。

貴之はその全てをくまなくチェックした。

亜美が、少なくともある時期までは行動を起こそうとしていた事、そしてそれを取りやめた理由についても、断片的ではあるが日々の日記から読み取ることができた。

これが昨年末までの、亜美の全てという訳だ。

その後から今日までについては想像をするしか無かった。
亜美は日記の中で妊娠したことを書いているが、これが雅彦による偽装であったことは冬休みの間に判明したため、日記の中では触れられていない。

貴之も薄々ではあるが、計算が合わないと感じていた。
あの時点で妊娠していたとするならば、もう産まれているはず。
『とつきとおか』という言葉くらいなら貴之とて知っているが、先日見た亜美の腹は、確かに大きく膨らんでいたものの...。

貴之としては、亜美が失踪した以降の状況が何より気になるところではあった。
しかし、昨年末を最後に日記の更新がストップしていることから考えると、その後亜美が不自由を強いられていたことは想像に固くない。

事情はどうあれ、亜美はまた武田家に舞い戻り、その地下室とやらで今日も男達に弄ばれているのだろうか。

亜美は日記の中で、『運命』という言葉を多用していた。
それが諦めなのか、はたまた本気でそう思って居たのかは分からない。

このスマホを貴之に託した亜美の言葉を思い返す。
何としてでも無事に子供を産みたい。
だから何もするな、と。

今現在の亜美の状況が分からないだけに、その言葉の真意を掴み損ねてしまうが...少なくとも亜美は、これを見た貴之に何も行動を起こして欲しくない、と言っているのだろう。

これほどまでに辛いことがあるだろうか。
この日記に書かれていることは、犯罪行為であることが明らかであるのに。

それをも『運命』として受け入れ、子を産み母になることを望む亜美。

そんな彼女の覚悟に触れ、確かに自分などには何もできることは無いのだろうと、貴之は静かに肩を落としていた。


「...貴之?起きてる?ちょっといいかしら...」

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