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セイドレイ【完結】
第47章 夜明けまえ
その夜ーー。

予定していた分娩を終えた雅彦は、健一と居酒屋の個室にて落ち合っていた。


「NPO法人『Baby One』...とな?」

雅彦は眼鏡を上にズラし目を細め、健一のスマホの画面を覗き込む。

「あぁ。どう考えても怪しいだろ...?民間の養子斡旋団体だ。城島不動産が設立したNPO法人の中のひとつ。だけどその実態は、この適当なWebサイトがあるだけで、事業所の所在地も城島不動産が所有する空き物件になってる」

「なるほど...」

「しかも今年の6月の株主総会で、息子である城島秀典が代表取締役に就任したタイミングで設立された法人なんだよ。律子は設立の経緯について詳しいことは知らない、って言ってたけど...それ以上はあまり深掘りできなくってさ...でも、タイミングから何から考えて、恐らくこいつで間違い無いんじゃないかな...」

「金の流れを誤魔化す方法なら他にもありそうだが...わざわざ養子斡旋などとしていることから考えても間違い無いだろうな。そして新堂の目的もこれではっきりしたということか...まさかあいつ、もしかして最初からそのつもりで...」

ついに、雅彦は新堂が本来目的としていた事の核心に触れる。

「ただ...恐らくその為だけ、に設立した法人じゃないと思うんだ。だって...どう考えても効率が悪過ぎるだろ。仮に亜美がフル稼働で子供を産んだとしても...当たり前だが年に1人しか産めないわけで。しかも毎回無事に産まれてくる保証もなければ、あんなことしてたら恐らく不妊になる可能性が高い」

「...確かに」

「養子斡旋となると、やっぱり医療法人が強いだろ?うちの病院はもう城島不動産が所有する物件になってる。つまり医療設備も揃ってるわけだ。となると、これから養子斡旋事業は拡大していくつもりなんだと思う。恐らく正規の手筈を踏んでね。だから今後亜美が産むことになる子供は、あくまでそのうちの一人ってわけ」

「...なるほどな。中絶させるより、産ませて養子に出すルートを持っておく。そうすれば子供が生まれようが流れようが、どちらにせよ対処が出来るという魂胆か。だから堂々と、亜美に産んでいいと言ったんだな...」
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