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セイドレイ【完結】
第48章 罪と罰

「うん...本山先生とも話し合って、全てが終わったら僕ら2人は自首しよう、って決めたんだ。幸い、僕は失うものなんて何も無いけど...本山先生は家庭がある。だから先日、奥さんに離婚を切り出したみたい」
「離婚...?」
「うん。僕や本山先生が刑罰を受けることになった時、それがどのくらいの罪になるかは分からないけど...本山先生としては家族に迷惑かけることになるから、その前に縁を切っておきたい、って。どのみち迷惑はかけちゃうんだけどね...。お子さんも受験とかで大変な時期みたいなんだけど...でも、しょうがないよね。犯した罪は取り消すことなんてできないから」
貴之はそんな田中の言葉に、亜美の日記を思い出していた。
会員リストをまとめ、それらの証拠となる動画をいつでも『セイドレイ』にアップできるように準備していた亜美。
しかし、それを実行しなかった理由の一つに、新垣太蔵とその娘、千佳の存在がある。
亜美は日記の中で何度も、その複雑な胸中を綴っていた。
地下室でのことが世間の公になれば、その内の一人である新垣太蔵の名前も上がる。
市民から熱い支持を受けていた市議会議員が性犯罪者だった、ということになれば、当然その娘である千佳も世間からの批判に晒されるのでは無いかと、亜美は気に病んでいたのだ。
特に日本は、加害者の身内に手厳しい一面がある。
仮にそんなことになれば、千佳の人生は大幅に狂ってしまうだろう。
しかし亜美は、たまたま同級生で千佳の顔を知っていたから思い悩んでいたわけでは無く、千佳が貴之に恋心を寄せていたことがどうやら一番の理由だったようだ。
自分と関わったことで貴之を不幸にしてしまったと感じていた亜美は、どこかで貴之の今後を千佳に託したかったのかもしれない...と、日記の端々からそんな亜美の気持ちを読み取ることができた。
自己犠牲もここまで来ると、信念に近いと貴之は思った。
たとえ自分が傷ついてでも、他人を傷つけたくないという強い気持ちは、亜美が持つ優しさには違いないだろう。
だが、自分あってこその人生であると、貴之は思う。
そしてそんな風に、誰かの犠牲の元にもたらされた幸せなど、貴之にとっては少しも嬉しくは無いのだ。
その時、本山のスマホが鳴る。
「...も、もしもし?あ、武田さんですか...?はい.....」
「離婚...?」
「うん。僕や本山先生が刑罰を受けることになった時、それがどのくらいの罪になるかは分からないけど...本山先生としては家族に迷惑かけることになるから、その前に縁を切っておきたい、って。どのみち迷惑はかけちゃうんだけどね...。お子さんも受験とかで大変な時期みたいなんだけど...でも、しょうがないよね。犯した罪は取り消すことなんてできないから」
貴之はそんな田中の言葉に、亜美の日記を思い出していた。
会員リストをまとめ、それらの証拠となる動画をいつでも『セイドレイ』にアップできるように準備していた亜美。
しかし、それを実行しなかった理由の一つに、新垣太蔵とその娘、千佳の存在がある。
亜美は日記の中で何度も、その複雑な胸中を綴っていた。
地下室でのことが世間の公になれば、その内の一人である新垣太蔵の名前も上がる。
市民から熱い支持を受けていた市議会議員が性犯罪者だった、ということになれば、当然その娘である千佳も世間からの批判に晒されるのでは無いかと、亜美は気に病んでいたのだ。
特に日本は、加害者の身内に手厳しい一面がある。
仮にそんなことになれば、千佳の人生は大幅に狂ってしまうだろう。
しかし亜美は、たまたま同級生で千佳の顔を知っていたから思い悩んでいたわけでは無く、千佳が貴之に恋心を寄せていたことがどうやら一番の理由だったようだ。
自分と関わったことで貴之を不幸にしてしまったと感じていた亜美は、どこかで貴之の今後を千佳に託したかったのかもしれない...と、日記の端々からそんな亜美の気持ちを読み取ることができた。
自己犠牲もここまで来ると、信念に近いと貴之は思った。
たとえ自分が傷ついてでも、他人を傷つけたくないという強い気持ちは、亜美が持つ優しさには違いないだろう。
だが、自分あってこその人生であると、貴之は思う。
そしてそんな風に、誰かの犠牲の元にもたらされた幸せなど、貴之にとっては少しも嬉しくは無いのだ。
その時、本山のスマホが鳴る。
「...も、もしもし?あ、武田さんですか...?はい.....」

