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第49章 業火

視聴者達は、リアリティを追求した新手の作風なのでは無いかと疑ったのだが、実際に動画に出てくる男達の姿を見て、これがあながち嘘では無いということに気付く。

特に、個人投資家、株式トレーダーとして度々メディアに出演していた前林歩(36)などは比較的顔を知られていることもあり、特定するのが容易だったことから、動画公開から12時間が経過した頃には、各SNSや匿名掲示板などでこれらに関する投稿が増え始めた。

じわじわと拡散されていく動画。
元からアダルトコンテンツに興味の無い層にまでその情報が届くのにはあまり時間を要さなかった。

動画が公開されてから3日経った今日、複数の入電や通報により事態を重く見た警視庁サイバー犯罪対策課が、ついに捜査に乗り出す。
更に、監禁、強姦事件の疑いもあることから、捜査一課も動き出そうとしていたところで、『ある一人の少年』が情報提供者として相談窓口に訪れた、という経緯だった。


「被害者の高崎亜美さんと、君の関係は？」

「...元交際相手です。昨年の12月まで付き合っていました。今日はこれを証拠として提出したくて...」

貴之はそう言って、亜美のスマホを捜査官に差し出す。

「...ここに、亜美が誰に何をされていたかの詳細が入っています。今、ネットで騒がれている動画の一部もこの中にあります」

「なるほど...ね」

「法律には詳しくないので、強姦事件が親告罪とかどうとか、警察は何かあってからじゃないと動けないとか色々よく分かんないんですけど...現行犯ということならなんとかなりませんか？」

「...というと？」

「今、亜美の家の地下室でまさに事が起こっている...はずなんです。どんな理由でもいいです。任意でも何でもいいんで、僕とこれからそこへ行って欲しいんです。どうかお願いしますっ...亜美を...あの地下室から助けてやってくださいっ...！」

「...ふむ.......なるほどね。だけど、もう少し詳しく、色々な話を聞かせてくれないかな？君が知っていることを全て。まずこのスマホの中身も確認しなくちゃいけないし...」