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セイドレイ【完結】
第49章 業火
果たして、この男が土下座する姿を見た者がこれまで居ただろうかと、雅彦は思う。

不満を漏らしていた会員達も、その異様な気迫に押され、渋々納得せざるを得ない様子だった。

「...仕方ありませんねぇ。今日だけですよ。その代わり、埋め合わせはしっかりしていただかないと次回の契約更新は考えさせてもらいますからね」

「...全く、急にどうしたって言うんだ?仕方ない、最後チンポだけ掃除せい!ほらっ、ほら早くっ...」

まだ名残惜しい会員達は、汚れた肉棒を亜美の口やカラダに擦り付けて拭うと、順次、着替えが入っているロッカーの方へ捌けて行く。

突如として中止された今宵のイベント。
あの新堂が土下座までして会員達を帰らせた理由とは一体何なのか。

「...お前達はここに残れ」

新堂は、雅彦ら5人にそう言い放つと、どうにも落ち着かない様子で頭を抱えながら、部屋の中をグルグルと回っている。

何かに怯え、焦っているような新堂の姿。

「(もしや...!?)」

雅彦はハッとする。
いよいよ、『セイドレイ』にアップした動画が騒ぎになっているのでは無いか、とーー。



「...はぁ。なんだか今日は不完全燃焼ですなぁ。どうです?これから高級ソープにでも行きますか?...しっかし、それも馬鹿らしいですなぁ...」

「ええ。今更よその女に金払ってセックスする気にもなりませんしねぇ」

いち早く着替えを終えた2人の会員がそんな会話を交わしながら、地下室から出て行こうとする。

「...あ、そうか。これ、扉は中から開かないんでしたっけ。いつもの雑用係は...あそこに居る、ってことは?今日はモニター室には誰が居るんだ?」

いつも、事が終わると外から扉の鍵を開けるのは監視担当である本山の役目だった。
しかし、今日その本山は、縄で縛られ部屋の中に居る。

開かない扉の前で会員達がおろおろしていると、突然何者かによって部屋の外から扉が開かれた。


「...どーも。お疲れ様でーす」


扉の外に立ってそう挨拶するのは、菅原だった。

「...お、おう。そうか、今日は君が監視役だったんだな?ご苦労。では私はこれで失礼.....」

会員は菅原を横切って部屋を出ようとする。

しかしその時。
菅原が手に持っているものが目に飛び込んで来る。

「...な、なんでそんなものを持っているんだ君はっ!?」
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