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セイドレイ【完結】
第50章 セイドレイ
「...あの、ひとつ聞いても...いいですか?」

今度は亜美の方から楓に質問をする。

「う、うん!いいよ、何でもっ...何でも聞いて!」

「楓さんは私のことを...というかこの事件のことを...本にするんですよね?」

「...今はそのつもり。だけど、無理強いはしない。もちろん亜美ちゃんの名前は仮名にする。だけど、ネットではあの事件の被害者少女Aが...あなたであることは皆知ってる。そんな状況で、私が事件について本を書くことは、亜美ちゃんにとって何のプラスにもならないどころかマイナスになるかもしれない。ただ...」

「...ただ?」

「...テレビ見てくれたなら分かると思うけど...私、亜美ちゃんのことが、変な部分だけ切り取られて報道されてるのがどうしても許せなかったの。皆、他人事だと思って好き勝手言いやがる。もちろん、真実なんて誰にも分からない。だけど...あまりに目も当てられないようなものも多いし、逆に大事なことは何も伝えない。それが悔しくてさ。それに、これから裁判がどうなって行くかは分からないけど、あれだけのことをしておいて犯人達は数年経ったら刑期を終えて外に出てくるわけでしょ?亜美ちゃんは一生残る傷を負わされたのに...そんなのあまりに理不尽だと思う。だからせめて、あいつらにかすり傷だけでも付けれないものかと思ってさ...」

「楓さん...」

「私の仕事は、事実をありのままに伝えること。嘘を書いてお金儲けしてる奴なんかに、亜美ちゃんのことを一文字でも書かせたくない。でもこれは私のわがままだ、ってことも分かってる。私だって、亜美ちゃんの人生でお金儲けしようとしてる一人であることには変わりないから。軽蔑されてもしょうがないと思う。でもね、もしやるからには私、作家人生を賭けて執筆しようと思ってる。亜美ちゃんが納得いくまで何年掛かっても、何度でも書き直すし、書いて欲しく無いことは絶対に書かない。もし、原稿が完成してもやっぱり世の中に出したく無いって言うなら、全部無かったことにする。それが私の正直な気持ちなの」

「楓さんっ...でもそれじゃ、私のせいで楓さんの大事な時間を無駄にしてしまうかもしれない...」
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