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セイドレイ【完結】
第50章 セイドレイ
唐突に明かされた、亜美の出生の秘密。
今は亡き戸籍上の父親と、武田雅彦との関係。

楓は、いけないことと分かっていてもつい、直感ではあるがそこにこの事件との因縁めいたものを感じずにはいられなかった。

レイプ被害者である女性に対し、『それは運命だ』などとは口が裂けても言いたくないし、思って欲しくない。
何より楓自身がレイプによって傷つけられた一人。
もしそれを他人から運命だと言われたら、許すことはできないだろう。

しかし、今目の前で可憐に振る舞う少女が、どうしてこんな事件の『悲劇のヒロイン』にならざるを得なかったのだろうかと考えた時、楓は『運命』という言葉の持つ説得力につい頼ってしまいたくなっていた。

「...それで、私は何をすればいいのかな...?」

「あ...えーと.....この...私の本当の父に、会いに行って欲しいんですが...やっぱり無理...ですよね?」

「わ、私が...その人に...?全然...全然構わないけど...会ってどうすればいいの?何か伝えたいことがある?それともここへ連れて来ればいい?」

楓は亜美からの思わぬ要求に驚きつつも、自分か何を望まれているのかを理解しようとしていた。

「い、いえ...。特に会いたいとかは無いんですけど...。ただ、今もその場所に生きているかどうかってことが分かれば。後は...もし可能なら、どんな顔をしてるのか...写真でもいいんです。会いたいというよりは、一目見てみたい、って感じで...」

「...なるほど」

「実は、この血縁上の父親のことは弁護士さんも知らないんです。私が事件の被害者となってしまったことで、その存在を明かすともしかしたら迷惑を掛けてしまうことになるかもしれないと思って...。本当の父が今独身なのか家庭があるのかも分からないですし。いきなり血の繋がった娘が出てきたと思ったら、あんな事件の被害者だったなんて言われても...きっとびっくりしちゃうんじゃないかと...」

「...確かに。そもそも、その血縁上の父親は、亜美ちゃんの存在自体は知ってるのかしら?あなたのママとどういう関係だったかにもよるけど...」

「...それも...分からなくて。もし私の存在自体を知らないなら余計、急に私が現れたら迷惑なんじゃないかと。でも...」

「...でも?」
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