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セイドレイ【完結】
第50章 セイドレイ
その後、弁護人からはいくつかの注意事項が言い渡された。

まず、亜美に直接取材していることを他言しないこと。
取材によって得た情報を漏えいしないこと。
容疑者らの刑が確定するまでは、本を出版しないこと。
原稿は全て、亜美と弁護人のチェックが入ること。
その他予告無く、亜美側から取材を打ち切ることがあってもそれに従うこと。

つまりは、原稿を完成させたとしても、その労力が水の泡になるかもしれない、ということだ。

「(望むところだわ...私だって、納得がいくものが書けるとは限らないもの...)」


楓は自宅マンションに帰宅すると、そのままソファに伏せた。

「はぁ~。短かったけどなんだか濃密な時間だったわ...」

目を瞑ると、亜美の顔が浮かんで来る。

これまで数々の取材を通し、たくさんの女性を見てきた。
発せられる言葉だけではなく、その表情、仕草からも相手の心理を読み取って来た。

一度執筆にかかると、取材協力者とは長い付き合いになるため、まずは相手の信用を勝ち取ることが最も重要である。

楓はその点、自身もレイプ被害者であるという『自己開示』により、女性の心へと潜り込むのは得意としてきた。

傷を見せて傷を見る、そこには女同士にしか分からない共感と安堵、そして癒しがあった。

では亜美の場合はどうだろうか。
初対面で証拠品のスマホを渡され、頼みごとまでされた。
これを打ち解けた証拠だと考えるのは簡単だ。

しかしーー。

「...ま、あれこれ考えても仕方ないわね。せっかく頼りにしてもらったんだから、しっかりと応えなきゃ...」

楓はこの時点で、亜美は『ストックホルム症候群』なのでは無いかと考えていた。

誘拐や監禁事件の被害者が、犯人に好意的な感情を抱いてしまうというPTSDの一種だ。
恐怖が愛情へと変化してしまうのに、1年半という期間は十分だ。

事実、亜美は警察への証言において、自身が監禁や強姦の被害に遭ったことは認めているものの、特に雅彦を含む武田親子3人、それから本山と田中については特に重い刑罰を望むような発言は一切見当たらず、時折庇うような態度すら見せているという。

問題なのは、非日常の中で芽生えたこれらの奇妙な愛情は、簡単に払拭できるものでは無い。

「私はあの子から、何を聞き出そうとしているのかしら」

楓は鞄から亜美のスマホを取り出した。
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