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セイドレイ【完結】
第51章 顔
「...実は私、こういう者でして...」

楓が名刺を差し出す。

「...月島...楓...って!あ!思い出した!あのテレビとかに出てる人!!いっつも余計なこと言って番組の最後に謝罪してる人ですよね!?」

「...世間一般の私に対するイメージってそういう感じなのね...。まぁいいんですけど。実は、あなたにいくつかお伺いしたいことが...」

「僕に?こんな有名人が...?か、構いませんけど一体何について...」

この、人を疑うことを知らない素直さも、亜美に引き継がれたものなのだろうと楓は思う。

「...でも今はお仕事中でいらっしゃいますよね?私は、あの先の喫茶店で時間を潰していますから、もしお昼の休憩にでも少しお時間を頂けるのであればそこでお話させて頂けませんか?お詫びに、昼食はご馳走させて頂きますので...」

「あ...あの喫茶店、もう何年も前に潰れてますよ?」

「...あ、あはは...。マジか。...ではこの辺りにどこか時間を潰せるところはありませんかね?」

「うーん...無い!時間なら大丈夫です。これでも僕、今はこの工務店の社長なんで、時間なんてどうとでも...なんなら、汚いですけどうちの事務所でもいいですよ?お茶くらいはお出しできますし」

「...本当ですか?めちゃくちゃありがたいです。ではそうさせて...」

その時、楓のスマホのバイブが鳴る。

「...ちょっと失礼。ん?...はいもしもし?楓です...どうしたの?...うん。うん!?本当に!?分かった...と、とりあえず私もできるだけすぐ向かうようにするから!うん、うん.....大丈夫よ。絶対大丈夫だから。しっかりね...はい」

楓はそう言って通話を終えると、すぐさま啓太郎にこう言った。

「...ごめんなさい。今から私についてきてくれませんか?詳しい事情は向かいながら話します」

「え??って急に言われても...僕こんな格好だし...」

「いいから急いで!あなたの娘さんがっ...あなたの血を引いた娘さんに、もうすぐ双子の赤ちゃんが産まれるんです!!さぁ、早く!急いで!!」

「は、はぁ~!?む、娘...?双子...?何がなんやら...第一僕は結婚もしてなければ、子供も居ないし...」

「じゃあ、ご自身のおっしゃる『酔った勢い』かもしれません!とにかく!私について来て!!」
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