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セイドレイ【完結】
第51章 顔
病院へ向かうため、電車に揺られる2人。
訳も分からず無理矢理連れ出された啓太郎に、楓は事の経緯を説明する。
もちろん、亜美があの『セイドレイ事件』の被害者であることは伏せたままで。

インターネットの世界にどっぷり浸かっていると、まるでそれがこの世の中の全てだと錯覚してしまいがちになる。
確かに、相当に話題になった事件ではあるのだが、一般人の大半はじきにそんなことは忘れて日々の暮らしに戻って行く。
所詮は他人事なのだ。
マスコミが報じなくなって以降もこの事件に関心を持っている層は、ネットが生活の一部になっている者だけだ。

啓太郎も、その大半を占める一般人の1人だった。
楓が『高崎亜美』という名前を出しても、特にピンと来てない様子だ。

「...じゃあ、高崎奈美さん、って名前に聞き覚えは無い...?」

「...うーん。タカサキナミ...ナミ、ってもしかして...奈良の奈に、美しいって書く...?」

「そう...!奈良の奈に美しいで奈美!ご存知です...?」

「苗字は高崎じゃあ無いけど。深谷奈美っていう子が高校の同級生で...ていうか付き合ってた。奈美とは...あれもう何年前かなぁ。確か、高校の同窓会があった時に、久しぶりに再会して...。ねぇ、これ言わなきゃダメ...?」

「ダメ!」

「...はぃ。お姉さん、美人だけどキツいね。だがそれがいい!...あー、ごめん。話が逸れた。同窓会で久々に奈美に会って、卒業以来だったから盛り上がってさ。お互い、変わらないね~なんて。そんで、僕ら二次会には行かずに、2人で別の店で飲んだんだよ」

「...それって、今から17年近く前の話じゃないです?」

「うーん...言われてみれば、そんくらいかなぁ。で、まぁ...昔話してるうちに、酔ってたのもあってなんだかそういう雰囲気に...あ、引いてる?もしかしてドン引きしてる感じの顔?」

「...大丈夫。続けてください」

「...はい。そんでまぁ...なんか奈美の奴、めちゃくちゃ悲しそうな顔しててさ。ていうのも、僕ら嫌いで別れた訳じゃ無かったから...。お姉さんには信じてもらえないかもしれないけど、本当に奈美のことが好きだった。だから、いずれは結婚しようね、ってお互いに言ってたんだけど...」

「...じゃあどうして別れたの?」
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