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セイドレイ【完結】
第51章 顔

「うん...簡単に言うと、奈美の親に猛反対されてね。僕は高校を卒業したら、家業を継ぐことが決まってたんだけど...そんなしがない工務店なんかに娘をやれるか、って。で、そんなこと言われたらうちの親父も怒っちゃってさ。だから高校卒業と同時に別れた。あいつはその後大学に進学したけど、もう一切連絡を取ってなかったから...同窓会で会ったのが別れて以来だったんだよ」
「...そうだったんですね」
「うん。で、久々に再会して2人で飲んでたら、あいつが泣きながら...『どうしてあの時、私の手を離したの?』って。いやいやいやいや、ねぇ?そりゃ僕だって離したく無かったけど...そうかぁ、そりゃ悪いことしたなぁって。そんで、僕はまだ奈美のことが好きだったからさ、『やり直さないか?』ってその時に...」
「...ちなみに、ご存知無いかもしれませんが、奈美さんはその時、既にご結婚されていたんです」
「え!?そうなの??いや、一応、僕はちゃんと本人に確認したんだよ?そしたら夫も彼氏も居ないって言うから...指輪もしてなかったし。そうと分かってたら、やり直したいなんて言わないよ。そっか...あいつ結婚してたのか。じゃあなんであんな悲しい顔で...旦那とうまくいって無かったのかな...」
女心。
楓は、奈美の行動をそう察した。
夫の無精子症による不妊。
きっと、その他色々なことが積み重なっていたのだろう。
そんな時、かつての恋人に再会し、こんな無防備な笑顔を向けられたら、左手の薬指に嵌めた指輪を隠してしまいたくなる気持ちも分からなくは無い。
「その後、ホテルに行って。あいつ、『あなたの子供が欲しい』って。だから、てっきり奈美もやり直してくれるものだと...。僕も本気だったからさ。今度こそ、って。だからそのつもりで奈美を抱いた。...でも、僕の勘違いだったんだね。結局それっきりだった。目が覚めたらあいつ、もう部屋に居なくてさ...」
古い一夜の思い出を語る啓太郎の横顔からは、先程までのどこか軟派な雰囲気は感じられなかった。
恐らく、啓太郎は本気で奈美を愛していたのだろう。
「...差し支えなければ。あなたが今の今まで独身を貫いているのは...もしかして奈美さんが理由なんでしょうか」
「...そうだったんですね」
「うん。で、久々に再会して2人で飲んでたら、あいつが泣きながら...『どうしてあの時、私の手を離したの?』って。いやいやいやいや、ねぇ?そりゃ僕だって離したく無かったけど...そうかぁ、そりゃ悪いことしたなぁって。そんで、僕はまだ奈美のことが好きだったからさ、『やり直さないか?』ってその時に...」
「...ちなみに、ご存知無いかもしれませんが、奈美さんはその時、既にご結婚されていたんです」
「え!?そうなの??いや、一応、僕はちゃんと本人に確認したんだよ?そしたら夫も彼氏も居ないって言うから...指輪もしてなかったし。そうと分かってたら、やり直したいなんて言わないよ。そっか...あいつ結婚してたのか。じゃあなんであんな悲しい顔で...旦那とうまくいって無かったのかな...」
女心。
楓は、奈美の行動をそう察した。
夫の無精子症による不妊。
きっと、その他色々なことが積み重なっていたのだろう。
そんな時、かつての恋人に再会し、こんな無防備な笑顔を向けられたら、左手の薬指に嵌めた指輪を隠してしまいたくなる気持ちも分からなくは無い。
「その後、ホテルに行って。あいつ、『あなたの子供が欲しい』って。だから、てっきり奈美もやり直してくれるものだと...。僕も本気だったからさ。今度こそ、って。だからそのつもりで奈美を抱いた。...でも、僕の勘違いだったんだね。結局それっきりだった。目が覚めたらあいつ、もう部屋に居なくてさ...」
古い一夜の思い出を語る啓太郎の横顔からは、先程までのどこか軟派な雰囲気は感じられなかった。
恐らく、啓太郎は本気で奈美を愛していたのだろう。
「...差し支えなければ。あなたが今の今まで独身を貫いているのは...もしかして奈美さんが理由なんでしょうか」

