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セイドレイ【完結】
第52章 親展

トメの養子となった亜美は、現在『市川』姓を名乗っている。
市川亜美。
それが亜美の名前だ。
世間を騒がせた『セイドレイ事件』。
その被害者である『高崎亜美』は、もう居ないのである。
双子の息子はそれぞれ、
『朝日(あさひ)』、『陽気(はるき)』
と名付けた。
陽の当たらない地下室に閉じ込められていた亜美にとって、この2人の息子は燦然と自分を照らしてくれる太陽そのものだったのだろう。
トメの死後、亜美はその遺産を相続した。
そのため、現在はひとまず住む場所と生活は何とかなっているが、いつまでもこのままという訳にはいかない。
事件の舞台となった街に住み続けることにも抵抗が無いわけでは無かった。
数キロ先には、今は廃墟となった武田クリニックと、火災により更地となったあの屋敷跡が存在している。
自分一人ならまだしも、息子達の今後のことを考えた時、そろそろこの街から離れることを決心していた。
(トメさん...また必ず来ますね...)
「ねーねーママー、ばーばいないの?」
朝日がそう亜美に尋ねる。
「...うん。ばーばはねぇ、お星様になったんだよ」
「おほしさまなってない!なったじゃないー!」
近頃、亜美が言うことを何でもかんでも否定するのが朝日のマイブームらしい。
「...はいはい。分かったから。じゃあそろそろ行こっか」
「マッマ!だっこ。だっこぉ。ぼくちゅかれた」
一方、そう言って亜美の左足に抱きつく陽気は、のんびり屋の甘えん坊だ。
「だっこしーないー。さ、車までママとかけっこするよ~。よーい、ドン!」
霊園の駐車場まで子供達とかけっこするその姿は、誰がどう見ても仲睦まじい親子だった。
亜美は2年前、運転免許を取得した。
ワンボックスタイプの軽自動車、その後部座席のジュニアシートに2人の息子を乗せると、亜美は車を走らせる。
「ママぁ。ねーママぁ~」
「はーい。どうしましたか市川朝日くん~?」
「いちかわあさひくんじゃなーい!あ・さ・ひ!」
「はいはい。朝日、なーに?」
「どこいく?」
「今日はこれからじーじのとこ行くよ~」
「やった!じーじ!」
「マッマ、じーじすき?」
「うん。好きよ。でも陽気の方がもっと好きかな~。陽気は?ママ好き?」
「マッマ!しゅき」
「ママしゅきじゃなーい!」
市川亜美。
それが亜美の名前だ。
世間を騒がせた『セイドレイ事件』。
その被害者である『高崎亜美』は、もう居ないのである。
双子の息子はそれぞれ、
『朝日(あさひ)』、『陽気(はるき)』
と名付けた。
陽の当たらない地下室に閉じ込められていた亜美にとって、この2人の息子は燦然と自分を照らしてくれる太陽そのものだったのだろう。
トメの死後、亜美はその遺産を相続した。
そのため、現在はひとまず住む場所と生活は何とかなっているが、いつまでもこのままという訳にはいかない。
事件の舞台となった街に住み続けることにも抵抗が無いわけでは無かった。
数キロ先には、今は廃墟となった武田クリニックと、火災により更地となったあの屋敷跡が存在している。
自分一人ならまだしも、息子達の今後のことを考えた時、そろそろこの街から離れることを決心していた。
(トメさん...また必ず来ますね...)
「ねーねーママー、ばーばいないの?」
朝日がそう亜美に尋ねる。
「...うん。ばーばはねぇ、お星様になったんだよ」
「おほしさまなってない!なったじゃないー!」
近頃、亜美が言うことを何でもかんでも否定するのが朝日のマイブームらしい。
「...はいはい。分かったから。じゃあそろそろ行こっか」
「マッマ!だっこ。だっこぉ。ぼくちゅかれた」
一方、そう言って亜美の左足に抱きつく陽気は、のんびり屋の甘えん坊だ。
「だっこしーないー。さ、車までママとかけっこするよ~。よーい、ドン!」
霊園の駐車場まで子供達とかけっこするその姿は、誰がどう見ても仲睦まじい親子だった。
亜美は2年前、運転免許を取得した。
ワンボックスタイプの軽自動車、その後部座席のジュニアシートに2人の息子を乗せると、亜美は車を走らせる。
「ママぁ。ねーママぁ~」
「はーい。どうしましたか市川朝日くん~?」
「いちかわあさひくんじゃなーい!あ・さ・ひ!」
「はいはい。朝日、なーに?」
「どこいく?」
「今日はこれからじーじのとこ行くよ~」
「やった!じーじ!」
「マッマ、じーじすき?」
「うん。好きよ。でも陽気の方がもっと好きかな~。陽気は?ママ好き?」
「マッマ!しゅき」
「ママしゅきじゃなーい!」

