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セイドレイ【完結】
第9章 盟友

♢♢♢
「ほう…。またなにを言い出すかと思えば……」
雅彦の "計画" を聞いた新堂は、いぶかしげな表情をする。
「ワシは正気だ。狂っているように思えるかもしれんが…」
新堂は、机の上に置かれた亜美の写真を手に取り、それをまじまじと見つめた。
「たしかに…なんとも言い難い魅力を秘めた娘だ。お前の親族にこんな娘が居たとはな」
新堂は腰掛けていたソファから立ち上がると、理事長室の窓からブラインド越しに外を眺めた。
「…お互い60か──。いろいろあったな。女も飽きるほど買った…」
「…生徒にも手を出したか?」
「ククッ…。まぁ、そこはお前の想像に任せるが──お前、東南アジアの少女を買ったことはあるか?」
「いや…、あいにく貧乏暇なしでな。旅行はもう久しく行っとらんよ」
「…そうか。人というのは金を手にすると、不思議と物欲はなくなる。そして、誰もが買えるものに興味が薄れるんだよ」
「………」
「この世には、そんな金を持て余した不幸な奴らがたくさんいる。意外と簡単なことかもしれんな」
「新堂…?それなら…──」
「…あぁ。俺たちも歳を取った。人生の最後に、こんな馬鹿げた話に乗ってみるのも悪くない」
「お、恩に着るっ…。お前には本当に助けられてばかりで…」
「なぁに。これも同窓のよしみ。今さらそんなことを言うのも水臭いじゃないか。それに、俺は今久々に興奮してるんだよ──」
新堂が煙草に火をつける。
「フゥー…──とりあえず、地下室の改装資金は気にするな。大した額じゃないだろう。あとは、俺は俺で色んな方面にこの話を持ちかけてみる。報告は直接会ってやり取りすることにしよう」
「すまんな…。本当になにからなにまで……」
「気にするな。そんなことより、お前…本当に大丈夫なのか?」
「…ああ。地下の改装が終わるころまでにはなんとかする。迷ったが、息子たちにも協力してもらおうと思ってな」
「ははは。さすがだな。そうか、健一や慎二ももう立派な男だしな」
「…お前を巻き込んでしまって本当にすまない」
「いや、謝るのは失敗したときにしてくれ。大丈夫。俺とお前なら、きっとうまく行くさ…──」
そう言って、新堂は煙草の火を消した。
ここにもひとり、雅彦の欲望に引き寄せられた男が居たのだった──。

