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セイドレイ【完結】
第52章 親展

亜美はその後、一旦自宅へ戻ると、一泊分の荷物を準備して駅へと向かう。
隣県と言っても、目的地までは地下鉄と電車を乗り継げば50分程の距離だった。
清楚な白いノースリーブのワンピースに身を包んだ亜美は、まだ暑さが厳しい午後の日差しを抜け、地下鉄に潜る。
この4年の間、言うまでも無く実に色々なことがあった。
しかし、そんな亜美の容姿は、むしろあの頃とはまた違った魅力で溢れている。
元々の美しい造形はそのままに、母となったことが作用しているのだろう。底なしの母性を纏い、女としての輝きは更に増している。
化粧こそすれど、それも日焼け止め程度の薄づきのものだ。
あれから4年経ったとは言え、まだ亜美は若干19歳。
可憐な少女から大人の女へと変貌を遂げる過程の最中である。
そのカラダ付きも、艶めかしさは増す一方。
亜美とすれ違いざまに振り返るサラリーマンが、地下鉄のホームに散見される程だ。
では、『女』としての亜美は、この4年間どうしていたのか。
世の男共が、こんな美人を放っておく訳が無かった。
亜美がシングルマザーであることを知った上で、真剣に交際を申し込んで来た男は数知れず。
もちろん、腹の中ではただ単にカラダ目的で近づこうとしてきた者も多いだろう。
だが亜美は、そのどれもを断り続けている。
理由はいくつかあり、複雑な心情が絡んでいるのだが、ひとつはトメの存在が大きい。いや、今となっては大きかった、と過去形になってしまうのだが。
あの日、道で偶然会っただけの亜美に、その晩年の全てを捧げてくれたトメ。
トメが生きている間はその傍を離れず、最後の瞬間まで見届けることこそが亜美にとってはせめてもの恩返しであり、使命だと感じていたからだ。
もうひとつ大きな理由としては、やはり亜美があの事件の被害者であるということ。そして最愛の息子達が、その事件によって生まれた命だということだ。
市川と姓を変え、普段は事件のことを忘れて生活している。
しかし、誰かと深い関係性を築くとなれば、早かれ遅かれあの事件のことは避けては通れないだろう。
そんな過去を持つ自分を受け入れてくれる男が、果たして存在するのだろうかと亜美は思う。
いや、どこかには居るのかもしれないが、もし事件のことを打ち明けた時、どんな反応をされるかと思うと、亜美は怖かったのだ。
隣県と言っても、目的地までは地下鉄と電車を乗り継げば50分程の距離だった。
清楚な白いノースリーブのワンピースに身を包んだ亜美は、まだ暑さが厳しい午後の日差しを抜け、地下鉄に潜る。
この4年の間、言うまでも無く実に色々なことがあった。
しかし、そんな亜美の容姿は、むしろあの頃とはまた違った魅力で溢れている。
元々の美しい造形はそのままに、母となったことが作用しているのだろう。底なしの母性を纏い、女としての輝きは更に増している。
化粧こそすれど、それも日焼け止め程度の薄づきのものだ。
あれから4年経ったとは言え、まだ亜美は若干19歳。
可憐な少女から大人の女へと変貌を遂げる過程の最中である。
そのカラダ付きも、艶めかしさは増す一方。
亜美とすれ違いざまに振り返るサラリーマンが、地下鉄のホームに散見される程だ。
では、『女』としての亜美は、この4年間どうしていたのか。
世の男共が、こんな美人を放っておく訳が無かった。
亜美がシングルマザーであることを知った上で、真剣に交際を申し込んで来た男は数知れず。
もちろん、腹の中ではただ単にカラダ目的で近づこうとしてきた者も多いだろう。
だが亜美は、そのどれもを断り続けている。
理由はいくつかあり、複雑な心情が絡んでいるのだが、ひとつはトメの存在が大きい。いや、今となっては大きかった、と過去形になってしまうのだが。
あの日、道で偶然会っただけの亜美に、その晩年の全てを捧げてくれたトメ。
トメが生きている間はその傍を離れず、最後の瞬間まで見届けることこそが亜美にとってはせめてもの恩返しであり、使命だと感じていたからだ。
もうひとつ大きな理由としては、やはり亜美があの事件の被害者であるということ。そして最愛の息子達が、その事件によって生まれた命だということだ。
市川と姓を変え、普段は事件のことを忘れて生活している。
しかし、誰かと深い関係性を築くとなれば、早かれ遅かれあの事件のことは避けては通れないだろう。
そんな過去を持つ自分を受け入れてくれる男が、果たして存在するのだろうかと亜美は思う。
いや、どこかには居るのかもしれないが、もし事件のことを打ち明けた時、どんな反応をされるかと思うと、亜美は怖かったのだ。

