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セイドレイ【完結】
第52章 親展

そもそもそれ以前に、亜美には普通の男女交際というものが未だに分からない。
男女が出会い、お互いに愛し合っていくその過程は、亜美にとっては謎に包まれたままだ。
あんなことがあったのだから、そうなるのも仕方ない。
異性に対し、恋心といった好意的な感情を抱くよりも前に、陵辱者達によって『女であること』を徹底的に叩き込まれたのだから。
恋心、といえば、唯一それに非常に近しい感情として、貴之の存在があった。
事件後、貴之と亜美は一度だけ顔を合わせている。
その際、貴之には恋人が居ることが分かった。
歳上の女性だそうだ。
いずれ結婚するつもりらしい。
亜美はそれを、心の底から祝福した。
これは強がりでも何でも無く、嘘の無い正直な気持ちだった。
自分の弱さ故、貴之を傷つけてしまったことをずっと悔いていた亜美にとって、彼の幸せを願うことは何よりの償いだった。
気がかりなのは、千佳のその後。
父である太蔵が逮捕され間もなく学校を退学し、その後の消息は分からない。
自宅も既に空き家となっているため、母とどこか別の街へ越して身を潜めているのかもしれない。
4年の歳月は、あの事件に関わった全ての者達へ平等に流れる。
加害者らの刑も確定し、世間は事件のことを忘れかけていた。
『会員』として事件に関与した者の多くは、主な罪状としては児童買春とされた。
その頻度や内容により刑期は様々であったが、実刑を免れた者が多かった。
事件の社会的影響、悪質さから不起訴処分となった者はさすがに居ないが、執行猶予付きの判決が下り、保釈された者も居ると言う。
当然、世間はこの判決に納得していないようだったが、彼らの社会的損失は大きい。
何にせよ、もう過去のことなのだと亜美は思う。
今は愛する我が子に恵まれ、啓太郎という優しい父親も居る。
決して自分は独りでは無いのだと、朝日と陽気の寝顔を見て実感する毎日。
(なんだかこうして離れると...余計に会いたくなっちゃうな。普段はついつい、うるさいなぁなんて思っちゃうのに...)
亜美は地下鉄のホームで車両が来るのを待ちながら、スマホの待ち受けに設定した2人の息子と啓太郎が写る画像を眺める。
だが、何もかもを過去のこととして片付けられた訳では無いことを、当事者である亜美が一番よく分かっていた。
男女が出会い、お互いに愛し合っていくその過程は、亜美にとっては謎に包まれたままだ。
あんなことがあったのだから、そうなるのも仕方ない。
異性に対し、恋心といった好意的な感情を抱くよりも前に、陵辱者達によって『女であること』を徹底的に叩き込まれたのだから。
恋心、といえば、唯一それに非常に近しい感情として、貴之の存在があった。
事件後、貴之と亜美は一度だけ顔を合わせている。
その際、貴之には恋人が居ることが分かった。
歳上の女性だそうだ。
いずれ結婚するつもりらしい。
亜美はそれを、心の底から祝福した。
これは強がりでも何でも無く、嘘の無い正直な気持ちだった。
自分の弱さ故、貴之を傷つけてしまったことをずっと悔いていた亜美にとって、彼の幸せを願うことは何よりの償いだった。
気がかりなのは、千佳のその後。
父である太蔵が逮捕され間もなく学校を退学し、その後の消息は分からない。
自宅も既に空き家となっているため、母とどこか別の街へ越して身を潜めているのかもしれない。
4年の歳月は、あの事件に関わった全ての者達へ平等に流れる。
加害者らの刑も確定し、世間は事件のことを忘れかけていた。
『会員』として事件に関与した者の多くは、主な罪状としては児童買春とされた。
その頻度や内容により刑期は様々であったが、実刑を免れた者が多かった。
事件の社会的影響、悪質さから不起訴処分となった者はさすがに居ないが、執行猶予付きの判決が下り、保釈された者も居ると言う。
当然、世間はこの判決に納得していないようだったが、彼らの社会的損失は大きい。
何にせよ、もう過去のことなのだと亜美は思う。
今は愛する我が子に恵まれ、啓太郎という優しい父親も居る。
決して自分は独りでは無いのだと、朝日と陽気の寝顔を見て実感する毎日。
(なんだかこうして離れると...余計に会いたくなっちゃうな。普段はついつい、うるさいなぁなんて思っちゃうのに...)
亜美は地下鉄のホームで車両が来るのを待ちながら、スマホの待ち受けに設定した2人の息子と啓太郎が写る画像を眺める。
だが、何もかもを過去のこととして片付けられた訳では無いことを、当事者である亜美が一番よく分かっていた。

