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セイドレイ【完結】
第52章 親展
ノンフィクション作家としては禁句にしてきた『運命』の二文字が、またしても楓の脳裏に浮かぶ。

しかも、亜美が産んだのが男児だということにも。
これがもし産まれたのが女児だったとしたら、また少し違っていたのかもしれないと楓は思う。

亜美から渡されたスマホの日記はもちろん、これまで度重なる取材を通して『高崎亜美』という女性の素顔に迫ろうとしてきた。

亜美という女性を語る時、絶対に見過ごせないものがある。

それは、湧き出る泉のようにとめどなく溢れ出す、


『母性』。


監禁、陵辱する男達に対して亜美が向けていたのは、他でもないその『母性』だったのではないかと、楓は推測している。

取材を始めた当初は、そんなことは断じて認めたくは無かった。
しかもこれは亜美本人が言い出した訳では無く、楓が勝手に感じてしまったことだったからだ。

吐き気がする。
その時は、そう思った。
ありえない。
あってはならない。

そんな、男にとって都合の良い母性などあってたまるものか、と。

しかし。
悲痛な運命に弄ばれる中、あの頃少女が導き出したひとつの答え。

『男は弱いもの』

これを、若干15歳であった当時の亜美が悟っていたという事実。
性暴力に支配され、『女の脆さ』を徹底的に叩き込まれたはずの少女が辿り着いた、ひとつの真実。

執筆を続ける上で、これはどうしても避けては通れないテーマなのではないかと、楓は考えるようになる。

「(だって私...あの日決めたんだもん...私は、あなたになってこの本を書き上げる、って...)」

亜美は恐らく、今も毎日『男の弱さ』を実感しながら、そのありあまる母性を生きる力に変えているのではないかと思う。

2人の幼き男児。
母親がいなければ、生きることさえままならないその小さな命。

腹を空かせた我が子が夢中で乳房に吸い付く様を見て、きっと亜美は何度もこう思ったはずだ。

『この子には、私しかいない』

とーー。

我が子へと向けられる母性。
母となった今、それは自然なことのようにも思える。

しかし、亜美は確かにあの15歳の頃、それに限りなく近い感情を、ある一人の男に向けていた。

武田雅彦。

今は獄中に居るその男に。


楓はこのことに気付いてしまってから、この『物語』をどう書き上げていいものなのかと、筆を迷わせていたのだ。
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