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セイドレイ【完結】
第52章 親展
「...そうね。産科医の菅原にしても、自分が男であることが許せなかった。それに関してはとっても気の毒だと思う。きっと辛い人生だったんじゃないかな。でも、じゃあその矛先を女に向けるのはお門違いよ。同じような境遇でも、必死に生きようとしている人はたくさん居るわ。私はそういう人にも取材してきた。いくら世の中が昔に比べたら寛容になったとは言え、そう簡単には変わらないものね。でも...あとほんの少し、何かが違っていれば、彼だって人の痛みが分かる優しい人間になれたかもしれない。それには、生きてきた環境、出会う人、様々な要因が複雑に絡み合うものだと思う。それは運によるものが大きいけど、本人の努力も必要よ。例えば亜美ちゃん、あなたのようにさ...?」

「私...ですか...?私、努力なんて、そんな...」

「...そうかしら。あなたが今こうして笑っていられるのは、あなたの努力による部分も大きいわ」

「ち、違いますよ...私は、それこそ楓さんのような存在や、今だとお父さん...とか。朝日や陽気のおかげで...」

と、言いかけて、亜美はふと、昨夜の情事を思い出す。
綺麗事では誤魔化せない、内なる自分の衝動。

男を欲しがって止まない、あのどうしようもない『疼き』と『渇き』をーー。

「...楓さん。あの...私、実を言うと...」

亜美は、今もあの頃のことを夢に見ること。
しかしそれは恐怖でうなされるのでは無く、どこかあの日々を渇望しているように感じること。
夜な夜なひとり、トイレに籠り、自身を慰めてしまうことを、できるだけ正直に打ち明けた。

「...そうなのね。話してくれてありがとう。じゃあ、もし今度そういう気持ちになっちゃった時は、私がお手伝いしちゃおっか?」

「...え?楓さんが手伝う、ってどういう...」

「ふふ。亜美ちゃん、もう嫌という程、散々男の相手はしてきたでしょ?同じものばかり食べてたら飽きちゃうじゃない?ならここは、新しい世界にチャレンジしてみるとか...」

「は...はぁ.....そのっ、つまりそれは、わ、私とっ...楓さんがっ...?」

「...ほらまたそうやってすぐ真に受ける。ジョーダンよ、ジョーダン。でも、そんないじらしい顔されちゃうと、本当に襲っちゃうわよ~?なーんてね...」
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