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セイドレイ【完結】
第52章 親展
「...あんまり意地悪言うと嫌われちゃうわね。そっかぁ...うん。その...性衝動みたいなのはさ、例えば今、彼氏が出来たりしたら収まりそう?彼氏じゃなくても...例えば、そういう相手になってくれる、つまりはセックスしてくれる男性が身近に居たとしたら...どうなのかしら?」

「う~ん...。そこが良く分からないって言うか。...ううん。むしろはっきり分かってるのかもしれない。例えば、今日も...今学んでいることの研究会に参加して、より子育てっていうものとか...子供達への愛情とか...母親としての自分は、まだまだ至らないところだらけだけど...それでも実感というか、迷い?みたいなものは無いと思うんです。これでいいんだな、って思えるというか。でも、じゃあ女として、いざ男性にどう向き合おうかと考えた時に...」

亜美はそこで、しばらく押し黙ってしまう。
しばらく間を置き、今度は楓が口を開いた。


「...武田雅彦のことが、忘れられないの?」


楓は、核心に触れようとしていた。
その答え次第では、原稿の内容を変えなければならない。


「...すごいですね、楓さん。実は先日...うちにこれが届いて...」

亜美はそう言って、バッグの中から1枚の封筒を取り出す。

「...手紙?」

「...はい」

楓は、その封筒の裏に書かれた差出人の名前を確認する。


『武田雅彦』


そこには、力強く達筆な字で、そう書かれていた。


「...刑務所から...弁護士さんを通して、つい先日届いたんです。私...これが届いた時っ.....ゴメンナサイ」

亜美は俯き、小さく謝罪の言葉を口にする。

「...どうして?謝ることなんかないわ。私に気を遣っているならそんな必要は無いわよ。自分の心に、正直に。もう何も我慢しなくていいんだから...ね?」

「...ハイ。この手紙を...読んで.....どうしてっ...こんなに.....切ないんだろぅ、って.....誰にも抱いたことのない気持ちを、どうして...お父様だけに抱いてしまうのか、って思って.....今私はもう...独りじゃないのにっ.....幸せなはずなのに.....」

犯罪者が誰かに手紙を書く場合、その内容は全て検閲される。
つまり、亜美の手元に届いたということは、届けても問題無い内容であったことは確かだ。
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