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セイドレイ【完結】
第53章 落日

亜美は慎二の夜食を作るため、キッチンへ赴くと、冷蔵庫の中身と睨めっこをする。
「う~ん...焼きおにぎりに..しようかな...」
亜美は調理をしながら、ぼんやりと考え事をしていた。
性被害者とその加害者らが、同じ屋根の下に暮らすという常識では考えられないこの奇妙な家族のかたち。
それを望んだのは亜美本人の意志であり、そのことについては全く後悔していない。
もちろん、他人からすると到底理解できないであろうことも亜美は分かっている。
しかしながら、4年間密着取材を続けたあの楓でさえ、これが血迷った決断では無いことを理解し、亜美の意志を尊重したのだ。
子供達が成長するにつれ、考えなければならないことは山のようにある。
事件のことを含め、子供達の出生に関する秘密に向き合わなければいけない日がいずれやって来るかもしれない。
それでも、亜美はこんな毎日にささやかながら幸せを感じられるようになっていた。
たとえそれが愚かしいことだとしても、だ。
しかし、亜美にはまだやり残したことがある。
その為にこの家を買い、健一と夫婦になり、慎二をこの家に住まわせたのだ。
近々、雅彦が出所するーー。
亜美はそのことが分かってから、どこか落ち着かない日々を過ごしていた。
既に健一も慎二もそれを知っており、雅彦を迎えに行くつもりでいるようだがーー。
雅彦は、現状亜美達がどうなっているかを、全く知らない。
獄中から届いた雅彦からの手紙にも、亜美は返事を出していないからだ。
(...だって、あれが最後だなんて...私は認めたくない。絶対に)
「.....亜美、亜美...?」
「...え?あ、慎二さんっ...!す、すいません、今作っているところなんでもう少し待っててもらってもいいですか?」
「あ、いや...うん。わざわざ部屋まで運んでもらうのも悪いかなと思って...。キッチンで食べようかなってさ。ところでなんか焦げ臭いけど...大丈夫?」
「あっ...!?...しまった。ついぼーっとしちゃってて...はぁ。ごめんなさい。すぐ作り直します...」
「い、いいよ...多少焦げてるくらい...せっかく作ってくれたんだから」
「...すいません。慎二さんが焼きおにぎり好きだからと思って...。こんななら、普通のおにぎりにしとけばよかった...はは...」
「う~ん...焼きおにぎりに..しようかな...」
亜美は調理をしながら、ぼんやりと考え事をしていた。
性被害者とその加害者らが、同じ屋根の下に暮らすという常識では考えられないこの奇妙な家族のかたち。
それを望んだのは亜美本人の意志であり、そのことについては全く後悔していない。
もちろん、他人からすると到底理解できないであろうことも亜美は分かっている。
しかしながら、4年間密着取材を続けたあの楓でさえ、これが血迷った決断では無いことを理解し、亜美の意志を尊重したのだ。
子供達が成長するにつれ、考えなければならないことは山のようにある。
事件のことを含め、子供達の出生に関する秘密に向き合わなければいけない日がいずれやって来るかもしれない。
それでも、亜美はこんな毎日にささやかながら幸せを感じられるようになっていた。
たとえそれが愚かしいことだとしても、だ。
しかし、亜美にはまだやり残したことがある。
その為にこの家を買い、健一と夫婦になり、慎二をこの家に住まわせたのだ。
近々、雅彦が出所するーー。
亜美はそのことが分かってから、どこか落ち着かない日々を過ごしていた。
既に健一も慎二もそれを知っており、雅彦を迎えに行くつもりでいるようだがーー。
雅彦は、現状亜美達がどうなっているかを、全く知らない。
獄中から届いた雅彦からの手紙にも、亜美は返事を出していないからだ。
(...だって、あれが最後だなんて...私は認めたくない。絶対に)
「.....亜美、亜美...?」
「...え?あ、慎二さんっ...!す、すいません、今作っているところなんでもう少し待っててもらってもいいですか?」
「あ、いや...うん。わざわざ部屋まで運んでもらうのも悪いかなと思って...。キッチンで食べようかなってさ。ところでなんか焦げ臭いけど...大丈夫?」
「あっ...!?...しまった。ついぼーっとしちゃってて...はぁ。ごめんなさい。すぐ作り直します...」
「い、いいよ...多少焦げてるくらい...せっかく作ってくれたんだから」
「...すいません。慎二さんが焼きおにぎり好きだからと思って...。こんななら、普通のおにぎりにしとけばよかった...はは...」

