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セイドレイ【完結】
第53章 落日
浴室に入ると、亜美は洗面器にローション入れ、お湯で溶かす。

「...慎二さん、見て...?ヌルヌルしてる...」

亜美は、糸引くローションを指で掬って見せる。

「う、うん...すごい...ね」

「慎二さん、横になって...?」

亜美に言われるがまま、慎二は床に敷かれたマットの上に仰向けになる。


流しっぱなしのシャワーが、浴室内に湯気を充満させていく。
湿気と汗で亜美の顔はほんの少し赤らみ、この状況に高揚しているようにも思えた。

すると亜美は、床に寝転ぶ慎二の巨体の上に馬乗りになる。
下からのアングルで眺む亜美のカラダは、途端に輪をかけてワガママになるのだ。

「...慎二さん...まだ思い出せませんか...?」

「...うっ...ごめんよ.....めちゃくちゃ興奮してるのは、確かなんだけどっ...」

思い出す、とはーー。

かつて亜美に自分をご主人様と呼ばせ、性玩具として従えていた頃のことだ。

自分の都合と気分で亜美を襲っては、そのカラダだけでなく卑劣な言葉を浴びせて心までも徹底的に陵辱していたあの頃。

慎二は、どうしてあんな風に亜美を扱えていたのかが思い出せなかった。
それは自分の罪を忘れた、ということでは無い。
むしろ慎二はついさっきも、『絶対に忘れちゃいけない』と自ら口にしていた程だ。

では、思い出せないとはどういうことなのか。

あんなことをしておきながら、今亜美と同居しているという現実。
本来であれば受け入れられるはずのない自分に、亜美はまるで何も無かったかのように優しく接してくれている。

いや、本当に何も無かったかのようなら、慎二はここまで戸惑っていないかもしれない。

一緒に暮らすようになってから、亜美は度々このようにして慎二を誘惑する。

そして毎回、慎二に訴えかけるのだ。


『思い出して』


とーー。



亜美は慎二の上でカラダを密着させると、慎二の全身から流れ出る汗を、舌で丁寧に舐め取って行く。

「あっ...亜美ぃ.....くすぐったぃ...よっ.....」

「んふぅ...ご主人様の汗の臭いだけで...イッちゃいそぅ...」

全く躊躇すらせず、脇の下にも舌を這わせ、恍惚の表情を浮かべている。

「...ゆっくりでいいですから。思い出せたら、またあの時みたいに..私を.....」
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