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セイドレイ【完結】
第53章 落日

その後、亜美は独りリビングで子供達の教科書に名前を書きながら、またもや物思いに耽っていた。
(やっぱり...これじゃ私...)
物足りない。
亜美はそう思っていた。
それは何を隠そう、2人とのセックスについてである。
健一は、亜美に母性を求めるあまり幼児退行が進んでいる。
甘えてくれるのは嬉しいのだが、どちらかというといつも亜美がリードする形になっていた。
そして慎二は、罪悪感からなのか意外な繊細さで、亜美とのセックスに遠慮や躊躇を見せている。
基本的に亜美が誘えば断ることは無いのだが、かつての横暴さは全くと言っていい程見られなくなっていた。
『疼き』と『渇き』。
まだあの衝動は亜美の中でずっと燻ったままだ。
亜美は自分でも信じられない程、あの武田家での日々を今も渇望していたのだ。
また一緒に暮らすようになれば、自然とそうなって行くと思っていた。
男達の欲望に晒され、ただそれを受け止めるだけだったあの毎日に戻れると思っていた。
(そんな...自分の都合のいいようには...いかない、か...)
『自惚れちゃん』
またもやそんな菅原の声が聞こえて来るようだ。
今更、健一と慎二にあの頃の振る舞いを期待しても、それは演技でしか無い。
そして亜美が求めているのは、そんなものでは無いのだ。
特殊な環境下で虐げられていたあの約1年と4ヶ月は、亜美に思わぬ哀しい痕跡を遺していた。
その後の人生の方がずっと長いのに、これではまるで余生を生きているようではないか、と。
子を生み母となっても、この身に深く刻まれた被虐による快楽は消え去ってはくれない。
カラダだけでなく、心までをも支配によって汚染されて行く、あの感覚。
地下室での最後の夜、亜美は確かにそれを見たのだ。
群がる男達に輪姦されながら、崩壊する自我を雅彦に見せつけた時、亜美はこの世のものとは思えない快楽に一瞬だけ取り憑かれた。
雅彦の叫び声が、今も耳の裏でこだまする。
亜美の人生を滅茶苦茶にした男の、悲痛な叫びが。
(あれは...愛ではなかったの?ねぇ、お父様...)
「...あ!ちょっとやだ...何やってんだろ私」
教科書に子供の名前を書いていたつもりが、間違えて自分の名前を書いてしまっていることに気づく。
(しかも...昔の名前を書いちゃうなんて。もう『高崎亜美』なんて居ないのに)
(やっぱり...これじゃ私...)
物足りない。
亜美はそう思っていた。
それは何を隠そう、2人とのセックスについてである。
健一は、亜美に母性を求めるあまり幼児退行が進んでいる。
甘えてくれるのは嬉しいのだが、どちらかというといつも亜美がリードする形になっていた。
そして慎二は、罪悪感からなのか意外な繊細さで、亜美とのセックスに遠慮や躊躇を見せている。
基本的に亜美が誘えば断ることは無いのだが、かつての横暴さは全くと言っていい程見られなくなっていた。
『疼き』と『渇き』。
まだあの衝動は亜美の中でずっと燻ったままだ。
亜美は自分でも信じられない程、あの武田家での日々を今も渇望していたのだ。
また一緒に暮らすようになれば、自然とそうなって行くと思っていた。
男達の欲望に晒され、ただそれを受け止めるだけだったあの毎日に戻れると思っていた。
(そんな...自分の都合のいいようには...いかない、か...)
『自惚れちゃん』
またもやそんな菅原の声が聞こえて来るようだ。
今更、健一と慎二にあの頃の振る舞いを期待しても、それは演技でしか無い。
そして亜美が求めているのは、そんなものでは無いのだ。
特殊な環境下で虐げられていたあの約1年と4ヶ月は、亜美に思わぬ哀しい痕跡を遺していた。
その後の人生の方がずっと長いのに、これではまるで余生を生きているようではないか、と。
子を生み母となっても、この身に深く刻まれた被虐による快楽は消え去ってはくれない。
カラダだけでなく、心までをも支配によって汚染されて行く、あの感覚。
地下室での最後の夜、亜美は確かにそれを見たのだ。
群がる男達に輪姦されながら、崩壊する自我を雅彦に見せつけた時、亜美はこの世のものとは思えない快楽に一瞬だけ取り憑かれた。
雅彦の叫び声が、今も耳の裏でこだまする。
亜美の人生を滅茶苦茶にした男の、悲痛な叫びが。
(あれは...愛ではなかったの?ねぇ、お父様...)
「...あ!ちょっとやだ...何やってんだろ私」
教科書に子供の名前を書いていたつもりが、間違えて自分の名前を書いてしまっていることに気づく。
(しかも...昔の名前を書いちゃうなんて。もう『高崎亜美』なんて居ないのに)

