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セイドレイ【完結】
第53章 落日
翌朝ーー。

子供達より一足先に家を出る健一を、亜美は玄関で見送る。

「はい、健一さん。お弁当」

靴を履き終えた健一に愛妻弁当を渡す亜美。

「...ありがとっ!今日は何かなー?ママのお弁当うまいから。会社でも皆から羨ましがられるんだ」

「う、嘘?も~恥ずかしい...全然大したことないのに...」

「本当本当。それに、なんでお前があんな美人の嫁さん捕まえたんだ~って。はは。本当そうだよな...。じゃ、ママ。んー...」

行ってきますのキスをせがむ健一に、亜美は応じる。

「ん.....」

「.....ねぇマッマ...今日もお仕事頑張るから...夜はおっぱぃしていい...?」

「...ふふっ...もぉ。はいはい、分かりました。お仕事頑張ってね」

「よっしゃ!今日も頑張れる気がしてきたっ!...あ、そういや今日、ママは面接だったけ?」

「あ...うん。まだどうなるか全然分からないけど...」

「...そっか。まぁ、ママなら大丈夫!そんな焦る必要も無いしね。また帰ったらどうだったか教えてな。じゃ、ママも頑張って!行ってきまーす!」

「は~い。行ってらっしゃい...」

(さて、と...)

亜美は健一を見送ると、子供達に朝ごはんを食べさせ、学校へと送り出す。
どこの家にもある、慌ただしい朝の風景。

特に今日、亜美はとある面接を控えていたため、いつも以上に家事をフルスピードで行っていた。

「...よし、洗濯物は干したし、慎二さんのご飯も用意したし...そろそろ準備しなきゃ」

亜美は白いブラウスに袖を通し、黒のスカートスーツに身を包むと、髪を後ろで一つ縛りにした。
時期的なこともあり、その姿は初々しい新社会人のように見える。

支度を済ませ、亜美が家を出ようとしていると、ようやく目を覚ました慎二が2階から下りてくる。

「...あれ?あ、そっか...今日は面接なんだっけ」

「あっ...慎二さんおはようございます!そうなんです。今から行ってきますね。ご飯、テーブルの上に置いてあるので...」

「あ...りがとう。...頑張ってね」

「はいっ。慎二さんもお仕事頑張ってください。では、行ってきます...!」

亜美はそう言うと、颯爽と玄関を出て行った。
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