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セイドレイ【完結】
第53章 落日

「ママ...遅くなるとは言ったけど...それにしてもちょっと遅過ぎるな...」
健一は、眠気で重くなる瞼をこすりながら、午前0時を回った時計を眺めていた。
まさか自分の妻が、廃墟のようなホテルの一室で肉塊になっているとは露知らず、リビングで愛する妻の帰りを待っていたのだ。
数分前に日付が変わって、今日はいよいよ雅彦が出所する日だ。
午前中、健一と慎二が2人で雅彦を迎えに行くことになっている。
もう眠ってしまっても問題ないのだが、今日に控えた雅彦の件で落ち着かない日々を過ごしていた亜美と少し話をしたかった。
『2軒目に行くのでちょっと遅くなります。ごめんなさい』
そんな亜美のメッセージから、既に4時間が経過している。
健一は何度か電話やメッセージを送ってはみたものの、一切返信は無かった。
「(いくら亜美が今日の主役だからって...所帯持ちをこんな時間まで連れ回すなんて常識で考えたらおかしいだろ...?ったく、一体どんな会社なんだよ...)」
健一は不安を覚えつつも、自分にはどうしようもできないことに少々苛立ち始めていた。
いくら戸籍上夫であるとは言え、亜美のすることに口出しなどできる立場ではないことを健一はもちろん自覚している。
だから亜美が慎二ともセックスしていることは当然容認しているし、その他何に関しても詮索するようなことは一切しない。
近所に暮らす住民らが、亜美に対していやらしい目を向けていることも分かっていた。
ゴミ出しの際はいつも誰か男に話しかけられているし、回覧板を持って来る男もいつもわざわざ玄関先まで上がり込み、亜美と談笑をしていく。
小学校の保護者達や教師も皆そうだ。
あわよくば、亜美のあのワガママなカラダにあやかろうとでも思っているに違いない。
だが仮にそうだったとして、健一に文句を言う資格は無い。
奇跡的に手に入れた夫の座ではあるが、それはあくまで亜美にとっては世を忍ぶ仮の姿、なのかもしれない。
そして何より、もうじき父である雅彦がここへやって来る。
健一にとってそれは本来喜ぶべきことなのだが、亜美の本心を知っているが故に複雑な胸中を抱えていた。
「(結局俺は...親父が戻って来るまでの繋ぎでしかないんだよな...)」
そう肩を落としていると、玄関の鍵が開く音がする。
「...ママ?帰って来た...!?」
健一は、眠気で重くなる瞼をこすりながら、午前0時を回った時計を眺めていた。
まさか自分の妻が、廃墟のようなホテルの一室で肉塊になっているとは露知らず、リビングで愛する妻の帰りを待っていたのだ。
数分前に日付が変わって、今日はいよいよ雅彦が出所する日だ。
午前中、健一と慎二が2人で雅彦を迎えに行くことになっている。
もう眠ってしまっても問題ないのだが、今日に控えた雅彦の件で落ち着かない日々を過ごしていた亜美と少し話をしたかった。
『2軒目に行くのでちょっと遅くなります。ごめんなさい』
そんな亜美のメッセージから、既に4時間が経過している。
健一は何度か電話やメッセージを送ってはみたものの、一切返信は無かった。
「(いくら亜美が今日の主役だからって...所帯持ちをこんな時間まで連れ回すなんて常識で考えたらおかしいだろ...?ったく、一体どんな会社なんだよ...)」
健一は不安を覚えつつも、自分にはどうしようもできないことに少々苛立ち始めていた。
いくら戸籍上夫であるとは言え、亜美のすることに口出しなどできる立場ではないことを健一はもちろん自覚している。
だから亜美が慎二ともセックスしていることは当然容認しているし、その他何に関しても詮索するようなことは一切しない。
近所に暮らす住民らが、亜美に対していやらしい目を向けていることも分かっていた。
ゴミ出しの際はいつも誰か男に話しかけられているし、回覧板を持って来る男もいつもわざわざ玄関先まで上がり込み、亜美と談笑をしていく。
小学校の保護者達や教師も皆そうだ。
あわよくば、亜美のあのワガママなカラダにあやかろうとでも思っているに違いない。
だが仮にそうだったとして、健一に文句を言う資格は無い。
奇跡的に手に入れた夫の座ではあるが、それはあくまで亜美にとっては世を忍ぶ仮の姿、なのかもしれない。
そして何より、もうじき父である雅彦がここへやって来る。
健一にとってそれは本来喜ぶべきことなのだが、亜美の本心を知っているが故に複雑な胸中を抱えていた。
「(結局俺は...親父が戻って来るまでの繋ぎでしかないんだよな...)」
そう肩を落としていると、玄関の鍵が開く音がする。
「...ママ?帰って来た...!?」

