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セイドレイ【完結】
第53章 落日

亜美は、1階の奥にある和室の窓を開け、風を入れる。
普段、誰も使用していないその部屋は、敷かれた琉球畳からまだ若い匂いが薫ってくる。
この和室はリノベーションの際、亜美が雅彦の為にと用意した部屋だ。
「今日はいいお天気...」
部屋に差し込む日光を浴びながら、亜美は独りそう呟いた。
あれから6年。
散々悩んだ挙句に、亜美が出した結論がこの和室に詰まっている。
全てはこの日の為にーー。
そう言っても過言では無いほど、待ち侘びていた日だ。
と同時に、最も恐れていた日でもある。
先程、楓からメッセージが届いていた。
今日の亜美の心中を察してのことだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おはよ。
あの男にはもったいないくらい今日は良い天気ね。
全く、どこまで恵まれた奴なのかしら。
雨女の私が今から行って大雨降らしてやりたい気分よ。
ああ。
二日酔いの私には、この日差しが疎ましいわ...。
亜美ちゃん、幸せかどうかなんてのは
他人のものさしでは測れないものよ。
だから自分の心に正直に。
それが誠実ということだから。
でももし男に飽きたら、
いつでも私のところへいらっしゃい。
あら、これ結構本気だからね?
じゃあ、また落ち着いたら会いましょう。
あなたの幸せを心から願っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
楓らしい、慈しみに溢れたメッセージだった。
故に、心が痛む。
(つい昨夜だって、私はあんな風に...)
肉欲に塗れた一夜を過ごしてしまったというのに。
でも、だからこそかもしれない。
より一層、雅彦への想いが募る。
(自分に...正直に...)
亜美は楓からのメッセージを心の中で反芻しながら、部屋の掃除を始める。
そして、押入に収納していた布団を取り出し、外へ干した。
「...さて、と。朝日ー!陽気ー!お買い物行くから準備して~」
『はーい!』
その時、亜美のスマホにメッセージが届く。
「...健一さんからだ...」
亜美は深呼吸をして、恐る恐るそのメッセージを開封した。
普段、誰も使用していないその部屋は、敷かれた琉球畳からまだ若い匂いが薫ってくる。
この和室はリノベーションの際、亜美が雅彦の為にと用意した部屋だ。
「今日はいいお天気...」
部屋に差し込む日光を浴びながら、亜美は独りそう呟いた。
あれから6年。
散々悩んだ挙句に、亜美が出した結論がこの和室に詰まっている。
全てはこの日の為にーー。
そう言っても過言では無いほど、待ち侘びていた日だ。
と同時に、最も恐れていた日でもある。
先程、楓からメッセージが届いていた。
今日の亜美の心中を察してのことだろう。
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おはよ。
あの男にはもったいないくらい今日は良い天気ね。
全く、どこまで恵まれた奴なのかしら。
雨女の私が今から行って大雨降らしてやりたい気分よ。
ああ。
二日酔いの私には、この日差しが疎ましいわ...。
亜美ちゃん、幸せかどうかなんてのは
他人のものさしでは測れないものよ。
だから自分の心に正直に。
それが誠実ということだから。
でももし男に飽きたら、
いつでも私のところへいらっしゃい。
あら、これ結構本気だからね?
じゃあ、また落ち着いたら会いましょう。
あなたの幸せを心から願っています。
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楓らしい、慈しみに溢れたメッセージだった。
故に、心が痛む。
(つい昨夜だって、私はあんな風に...)
肉欲に塗れた一夜を過ごしてしまったというのに。
でも、だからこそかもしれない。
より一層、雅彦への想いが募る。
(自分に...正直に...)
亜美は楓からのメッセージを心の中で反芻しながら、部屋の掃除を始める。
そして、押入に収納していた布団を取り出し、外へ干した。
「...さて、と。朝日ー!陽気ー!お買い物行くから準備して~」
『はーい!』
その時、亜美のスマホにメッセージが届く。
「...健一さんからだ...」
亜美は深呼吸をして、恐る恐るそのメッセージを開封した。

