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セイドレイ【完結】
第53章 落日

雅彦は家に上がるなり、そのまま和室へ籠った。
リビングには重苦しい空気が漂う。
「ねーママ、おっきいじーじは...?」
「...うん。おっきいじーじね、ちょっと疲れてるんだって。だから...今はそっとしといてあげて?あっちの部屋にも行っちゃダメよ...?」
「え~?つまんなーい!」
「...こーら。そんなこと言わないの...」
事情を知らない子供達の無邪気さが、余計に胸に迫る。
(やっぱり...そんな簡単なことじゃないって分かってたはずなのに...)
今でこそ、何事も無かったかのように暮らしている健一と慎二も、出所直後は亜美からの申し出に困惑し、躊躇する素振りを見せた。
それは難色を示したというよりは驚きに近いものだったが、じきに亜美の本心を知るとそれを受け入れた。
しかし雅彦に関しては、同じようには行かないだろうことを亜美は予感していた。
そしてそれがたった今、現実となったのである。
いくら覚悟していたとは言え、ああもあからさまに拒絶されると堪えるものがあった。
(私、今これ...傷ついてる、ってことだよね...?)
健一と慎二は、そんな浮かない表情の亜美をどうにか慰めようとするも、正直どうすればいいのか分からなかった。
「...親父の奴、丸くなるどころか余計カタブツになってんじゃねーか。自分だけ仲間外れで俺らがよろしくやってたのが気に入らなかったのか?ったく、子供じゃねぇんだから...相変わらず素直じゃねぇよな...」
健一がフォローのつもりかそうボヤくも、虚しく響くだけだった。
「で、でもさ...親父、すぐ出て行くって言ってるけど実際どうするつもりなんだろ?もう家も無いし...どっか頼るアテがあるからあんな強気なのかな...?」
慎二なりに考えを巡らせてみるものの、結局のところ雅彦がどういうつもりなのかは分からない。
そんな2人とは対照的に、亜美には雅彦の気持ちが何となく分かっていた。
そしてそれが簡単には覆らないこともーー。
「...健一さん、慎二さん。私なら...大丈夫ですから。色々ありがとうございます。とりあえず...ご飯作りますね!今日はたくさん買い物してきちゃったんで、いっぱい食べてくださいね~?」
そんな風に健気に振る舞う亜美が、健一と慎二には酷く切なく見えたのだった。
リビングには重苦しい空気が漂う。
「ねーママ、おっきいじーじは...?」
「...うん。おっきいじーじね、ちょっと疲れてるんだって。だから...今はそっとしといてあげて?あっちの部屋にも行っちゃダメよ...?」
「え~?つまんなーい!」
「...こーら。そんなこと言わないの...」
事情を知らない子供達の無邪気さが、余計に胸に迫る。
(やっぱり...そんな簡単なことじゃないって分かってたはずなのに...)
今でこそ、何事も無かったかのように暮らしている健一と慎二も、出所直後は亜美からの申し出に困惑し、躊躇する素振りを見せた。
それは難色を示したというよりは驚きに近いものだったが、じきに亜美の本心を知るとそれを受け入れた。
しかし雅彦に関しては、同じようには行かないだろうことを亜美は予感していた。
そしてそれがたった今、現実となったのである。
いくら覚悟していたとは言え、ああもあからさまに拒絶されると堪えるものがあった。
(私、今これ...傷ついてる、ってことだよね...?)
健一と慎二は、そんな浮かない表情の亜美をどうにか慰めようとするも、正直どうすればいいのか分からなかった。
「...親父の奴、丸くなるどころか余計カタブツになってんじゃねーか。自分だけ仲間外れで俺らがよろしくやってたのが気に入らなかったのか?ったく、子供じゃねぇんだから...相変わらず素直じゃねぇよな...」
健一がフォローのつもりかそうボヤくも、虚しく響くだけだった。
「で、でもさ...親父、すぐ出て行くって言ってるけど実際どうするつもりなんだろ?もう家も無いし...どっか頼るアテがあるからあんな強気なのかな...?」
慎二なりに考えを巡らせてみるものの、結局のところ雅彦がどういうつもりなのかは分からない。
そんな2人とは対照的に、亜美には雅彦の気持ちが何となく分かっていた。
そしてそれが簡単には覆らないこともーー。
「...健一さん、慎二さん。私なら...大丈夫ですから。色々ありがとうございます。とりあえず...ご飯作りますね!今日はたくさん買い物してきちゃったんで、いっぱい食べてくださいね~?」
そんな風に健気に振る舞う亜美が、健一と慎二には酷く切なく見えたのだった。

