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セイドレイ【完結】
第53章 落日
自分達の罪にあまりに無自覚。
このことは、かつての慎二を彷彿とさせる。

彼らは、リスクを承知した上で地下室での『危険な遊び』に興じていた会員達とは違うのだ。

それが意味するところを、これから亜美は思い知ることになる。




『返信してくれないならあの動画バラまいちゃうよーw』

木下のそんな卑劣な脅しに、今は従うしかない。
沈黙破り、亜美はトークルームに返信をする。


『すいません』
『突然のことでびっくりしてしまって』

とりあえず様子を見ようとそう返信してみると、すぐさま全員分の既読がつく。

すると、真っ先に反応を示したのは木下だった。


『で?』
『ちゃんと俺のツレに自己紹介してくださいよ』


(自己紹介って.....言われても...)

『はじめまして』
『市川亜美と言います』

木下に言われるがまま、簡潔な自己紹介をする亜美。
しかしーー。


『証拠見せてほしーな』


1人の男がそんなことを言い出すと、他の男達も次々とそれに続く。


『確かに。名前だけじゃ本人かどうか分かんないしw』
『本人確認は重要ですぞ~』
『どうする?』


亜美本人であるとの証拠を要求してくる男達。
もちろん、本人であるということは分かった上で、わざと言っているのだ。
まるでゲームを楽しむかのようにーー。


『ねー亜美ちゃん』
『今家に居るの?』
『それとも外?』


(そんなこと聞いてどうするの...?)

『今は外にいます』
『買い物中なので...』

亜美は正直にそう答えた。


『じゃあさ』
『スーパーとかならトイレあるっしょ?』
『そこで、オナニーしてるとこ写真撮って送ってよ』

『いいっすねそれw』
『ちゃんと顔が写るようにして』
『あ』
『どーせなら免許証も一緒に!』

『なるほど笑』
『それなら確実に本人確認になるね笑』


(そんなっ...そんなことっ...)


『じゃあそれで決まり』
『亜美ちゃーん?』
『免許証入りのオナニー画像』
『今から5分以内に送ってね』
『もし送らなかったら』
『動画バラマキの刑、ってことで』
『よーいどん!』


ついに男達のゲームがスタートする。

(どうしよう.....でもっ...)

顔の見えない相手からの脅迫に翻弄される亜美は、手に持っていたワイシャツを元の売り場に戻すと、館内のトイレを探したのだった。
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