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第53章 落日

「わ、私をっ...どうするつもり...ですか？」

「...ははっ。んなもん徹底的に嬲り倒すに決まってんだろ？なーんてな、嘘々。俺は今日、確かめに来たんだよ」

「...確かめ...る？」

「ああ。お前さ、本当は戻りてぇんじゃねぇのか？あん時に」

「そっ...んな.....」

亜美は、酒井に心臓を射抜かれた気がした。
自分でそう口に出すのと、他人から言われるのとでは天と地ほどの差がある。

『そんなことは無い』

どうしてたったそれだけの言葉を発することができないのだろう。
たとえそれが嘘だったとしてもーー。


「お前は今の自分に満足してんのか？こんなションベン臭ぇガキとママゴトみたいなセックスすんのがお前の望んだ人生か？」

「ち、違っ...私はただ...脅されてっ...」

「...脅されて？仕方無く？...へぇ。じゃ、武田健一と夫婦になって、その弟も一緒に暮らしてんのも、誰かに脅されたのか？大川の野郎の下で働くことにしたのも、脅されて仕方無くか？違うだろ？」

「それはっ...」

酒井の言うことはあまりにも図星だった。
誰に脅された訳でも無い。
全ては亜美が自分の意思で選んだことなのだ。

「...俺だってよ、まさかあの頃お前が本当に喜んで犯されてたなんて思ってねぇよ。だけど大川から聞いた限りだと、満更でも無かったんだろ？...そりゃ、そんな単純なもんじゃねぇだろうが。...そんでも、それ聞いて俺はシビれたぜ。やっぱお前は、そんじょそこらの女じゃねぇ、ってことにな」

「やめ...て...言わないで...」

「自由が辛いんだろ？何もかも自分で考えて決めなきゃいけねぇのが煩わしいんだろ？もう普通の幸せじゃあ満足できねぇんだろ？じゃなきゃわざわざ加害者と結婚なんて頭のネジがブッ飛んだことしねぇよ。お前は支配されたがってる。自分の運命が誰かの手中に握られてると思うと安心できんだよ。そうだろ？」

「やめてっ！！それ以上っ...言わないでっ.....お願い...」

「...へっ。良い顔してるぜ？今のお前。たまんねぇなぁ...。一発ブチ込んでやりてぇところだが、今日んところは帰してやる。その代わり今から俺が言うこと、考えといてくれ。なぁに、悪い話じゃねぇから。今のお前にとってはな...」

「今の...私に...？」