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セイドレイ【完結】
第53章 落日
酒井を含めた『加害者の会』のメンバー達も、亜美が事件後に健一と入籍し、慎二と同居しているなどとは夢にも思っていなかった。

徹底的に陵辱の限りを尽くした挙句、望まない妊娠までさせてしまった少女の現在を知った時、あらためて『高崎亜美』が普通の女では無かったことを思い知る。

事件が明るみとなり、地下室から解放され、平穏な暮らしに身を潜めているとばかりに思っていたが、まさか陵辱の日々を思い返し、どうしようもない『疼き』と『渇き』に寄る辺無いその身を焦がしていたとはーー。

そんな亜美の現状にたまらない高揚を覚えた『加害者の会』のメンバーらは、酒井と共にとある計画に乗り出す。

以前は、社会的地位の高い者だけをターゲットに、その貴賓性を全面に押し出していたあのビジネス。
しかし今は、それを演出するあの専用の地下室も、全てを統率していた新堂という男も居ない。

事件から6年。
あの被害者『少女A』は、もう一部の特権階級だけに与えられた物では無かった。
言い換えればそれはすなわち、『高崎亜美』という女の価値が世間一般に広がったということでもある。

そう、次のターゲットは、画面越しに亜美の痴態で股間を慰めていような、そんな群衆達だ。

当面は、木下の後輩である立山のアパートを利用し、そこで亜美は客を取る。
既に、立山らの吹聴によって、大学生を中心に『あの少女Aを抱ける』という噂は、今瞬く間に拡散されているところだ。

かつてのように高額な年会費は取らない。
その代わり、対象となる分母が圧倒的に増える。
『セイドレイ事件の被害者』という付加価値によって、亜美は娼婦となり、再び男達の欲望に晒されるということだ。

酒井はこの件に関し、決して亜美に強制をしたわけでは無かったが、仮に断ったとしても何かと理由をつけて脅迫してくることは目に見えている。

『お前がもしその気があるなら、週末またここに来い』

ただそう言い放ち、昨夜は帰された。
まるで亜美の胸中を見透かしているような、含みを持たせた酒井の表情。

亜美は、自分が破滅への道へ向かっていることを自覚していた。

(私は...今更何を期待しているの.....?)
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