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セイドレイ【完結】
第53章 落日
亜美は慌ててゴミをまとめ、収集所へ向かう為に家を出る。

すると家の塀の前に、町内会長である男が立っていた。

(なんだろう...?)

亜美は不思議に思いながらも、普段通り挨拶をする。

「...おはようございます」

その声を聞いた男が、何やら大層驚いた様子で亜美に視線を向ける。

(えっ...?な、何...?)

明らかに普段と様子が違う。
何か見てはいけないものを見てしまったような、そんな表情だ。

「あ、あのっ...会長さん、何かあったんですか...?」

するとその男は、無言でゆっくりと指を差した。
亜美がその方向へ目をやると、そこにはーー。

「えっ.......」

塀一面に貼られた、数十枚のビラが亜美の目に飛び込んで来る。


『市川亜美。ここに住むこの女は、あのセイドレイ事件の被害者、高崎亜美と同一人物。しかしその実態は、誰にでも股を開く尻軽女。被害者ヅラをして多額の賠償金をせしめ、父親が分からない双子を平気で産み、事件に関係した男と結婚して今も暮らしている薄汚いアバズレ女』


そんな文字と共に、ネット上に出回る亜美の動画のキャプチャ画像が添えられていた。

「何.....コレ.......」

亜美はぼう然とその場に立ち尽くし、そのビラをただ眺めていた。
一体今目の前で何が起きているのか、理解ができなかったのだ。

少しの沈黙の後、町内会長の男が恐る恐る声を発した。

「...これ、あんたか...?」

「...ち、違います。違いますっ...!」

すると亜美は塀に駆け寄り、そのビラを一枚一枚、一心不乱に剥がして行く。

「違うっ...こんなの私じゃないっ...!私じゃ...無いっ.....」

「い、いや...もし悪質なイタズラなら、警察に届けた方が...」

男のその言葉に、亜美はふと我に返る。

「...いえ、大丈夫っ...です。全く、誰がこんなことを...お騒がせしてすいません。こちらで対処しますのでっ...」

「...そ、そうかい?ならいいんだが...」

「あ、あの...このことは、誰にも...言わないでいただけると...」

「...お、おう...でもやっぱり警察に...」

「だっ、大丈夫ですからっ...本当にお気遣い無く...」

「分かった。でもあんた小さい子供もいるんだ。十分用心してな...?」

「...はい」
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