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セイドレイ【完結】
第53章 落日
その夜。

亜美は、雅彦以外の家族には体調が悪いということにして、寝室に籠っていた。

酒井がこの家に押し寄せて来たことは、今のところ健一と慎二には伏せてある。
2人には黙っていて欲しい、と雅彦に口止めしたのだ。
雅彦は何か言いたそうだったが、そのまま静かに部屋へと戻って行った。

子供を産み母となってから、亜美がこんな風に寝込んでしまうことなど一度たりとも無かったのだが、今日は一切の家事を健一と慎二に委ねることにした。
その為、よっぽど体調が優れないのだろうと、健一は亜美を案じて今日はリビングで寝ることにしたらしい。
息子達も、初めて見る母親の弱った姿に動揺している様子だった。

(本当...私は最低なお母さんだ...)

自分が犯した軽率な行動が災いし、幼い息子達に心配をかけてしまったことが許せなかった。

亜美は布団を頭までかぶり、ぐしゃぐしゃに丸められた招待状を右手に握り締め、久々に強い自己嫌悪に陥っていた。

楓には愛するパートナーが。
そして貴之の結婚。

そんな、亜美にとって大切な人に幸せな出来事が降り注ぐなか、一体自分は何をやっているのだろう、という行き場の無い哀しみが込み上げてくる。

(自業自得...か)

そんな四字熟語が亜美の頭に浮かぶ。
こんなはずでは無かった、と言ったところで、自分自身に嘘は吐けない。
たとえ一瞬でも、かつての日々に戻りたいと思ってしまったのは事実である。

いや、思えばこの6年、ずっとその淫夢に取り憑かれていたのだ。
早かれ遅かれ、何らかの形で平穏な日々に綻びが出始めていたかもしれない。

(これから...どうなっちゃうのかな...)

雅彦をこの家に囲っていることも、既に酒井に知られてしまった。
このことが今後、何に影響してくるのかは分からない。

このまま、みすみす酒井らの言いなりになっていれば、じきに今の生活は破綻するのが目に見えている。

『在るべき場所へ還す』

その酒井の言葉通りになるならば、亜美は再び何もかもを奪われるに違いない。

やはり、警察に相談してみるべきなのか。
今の生活を守りたいのであれば、それが最も賢い選択であろうことは分かっていた。

しかし、亜美にはもう自信が無かった。
たとえそれで今の状況が解決されたとして、果たしてその先にはどんな運命が待ち受けているのだろう、ということに。
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