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セイドレイ【完結】
第53章 落日

貴之も最初こそ、亜美が健一と結婚すると聞いた時は驚きもした。だが、亜美のスマホの日記を読み、その本心をいち早く察知していたのは他ならぬ貴之である。
亜美の雅彦に対する感情を知ったあの時、亜美を幸せにできるのは自分では無いと貴之は悟ったのだ。
結局のところ、楓にしても貴之にしても、最終的には亜美が一番に望むことを尊重し、自らは身を引いた格好なのである。
『...そんでさ。俺、その...どういうつもりで招待したかってことをもっとちゃんと伝えたかったんだけど、散々悩んであんだけしかメッセージカードに書くことができなくて。だから亜美が困惑してるんじゃ無いかと思って、それで...と、とにかく、俺はもう過去のことは何にも気にして無いから、亜美も何も気にせずに祝ってくれたら、って...それを伝えたくて...って、結局今もうまく言えねぇんだけど...』
亜美は、貴之の優しさを垣間見る。
一般的に考えれば、元彼女を結婚式に招待するなど、常識はずれかもしれない。
しかも、普通の元交際相手という間柄では無いのだ。
2人の間に起きたことを考えれば、未だにこうして連絡を取り合っていることさえ奇跡に近い。
しかし貴之にとっては、だからこそ、なのである。
そして亜美にとっても、自分の望みを尊重してくれた貴之の結婚を祝うことは、むしろ拒否できる道理など無かったのだ。
「...水野くん、ありがとう。大丈夫、水野くんの気持ちはちゃんと伝わってるから。ただ私が心配なのは...その...水野くんの奥様が...私のこと嫌なんじゃないかと思って...いくら今は何も無い、って言っても、やっぱり良い気はしないんじゃないかな、って...」
『...あ、そのことなら全然気にすんな。ていうか、亜美を呼べって後押ししてくれたの、俺の嫁さんだし...実は俺も迷ってたんだけどね。だから、それは大丈夫』
「そ、そうなんだ...素敵な奥様だね。あ...それでね?実は、水野くんに謝らなきゃいけないことがあって...えっと.....あの.....」
右手に持つ招待状を、亜美は更に握り締めた。
「...物凄く失礼な話...なんだけど、実は私...今朝、招待状を受け取った時に.....つ、つまづいて転んじゃって。それで...招待状を...みっ、水たまりに落としちゃってっ.....ありえないよね。本当にごめん...」
亜美の雅彦に対する感情を知ったあの時、亜美を幸せにできるのは自分では無いと貴之は悟ったのだ。
結局のところ、楓にしても貴之にしても、最終的には亜美が一番に望むことを尊重し、自らは身を引いた格好なのである。
『...そんでさ。俺、その...どういうつもりで招待したかってことをもっとちゃんと伝えたかったんだけど、散々悩んであんだけしかメッセージカードに書くことができなくて。だから亜美が困惑してるんじゃ無いかと思って、それで...と、とにかく、俺はもう過去のことは何にも気にして無いから、亜美も何も気にせずに祝ってくれたら、って...それを伝えたくて...って、結局今もうまく言えねぇんだけど...』
亜美は、貴之の優しさを垣間見る。
一般的に考えれば、元彼女を結婚式に招待するなど、常識はずれかもしれない。
しかも、普通の元交際相手という間柄では無いのだ。
2人の間に起きたことを考えれば、未だにこうして連絡を取り合っていることさえ奇跡に近い。
しかし貴之にとっては、だからこそ、なのである。
そして亜美にとっても、自分の望みを尊重してくれた貴之の結婚を祝うことは、むしろ拒否できる道理など無かったのだ。
「...水野くん、ありがとう。大丈夫、水野くんの気持ちはちゃんと伝わってるから。ただ私が心配なのは...その...水野くんの奥様が...私のこと嫌なんじゃないかと思って...いくら今は何も無い、って言っても、やっぱり良い気はしないんじゃないかな、って...」
『...あ、そのことなら全然気にすんな。ていうか、亜美を呼べって後押ししてくれたの、俺の嫁さんだし...実は俺も迷ってたんだけどね。だから、それは大丈夫』
「そ、そうなんだ...素敵な奥様だね。あ...それでね?実は、水野くんに謝らなきゃいけないことがあって...えっと.....あの.....」
右手に持つ招待状を、亜美は更に握り締めた。
「...物凄く失礼な話...なんだけど、実は私...今朝、招待状を受け取った時に.....つ、つまづいて転んじゃって。それで...招待状を...みっ、水たまりに落としちゃってっ.....ありえないよね。本当にごめん...」

