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セイドレイ【完結】
第53章 落日

亜美は咄嗟に嘘を吐く。
まさか、酒井によって招待状を膣内に捩じ込まれていたなどとは口が裂けても言えない。
『...ははっ!何かと思ったらそんなことかよ!全然気にすんなって...あんなんただの紙切れだし。てか、転んだんだろ?大丈夫か?怪我とかしてない...?』
「...うっ...うん.....本当に...ごめんなさいっ...」
亜美の瞳が、じんわりと涙で滲む。
あの頃と何も変わらない、貴之のそんな優しさが胸に痛い。
『...もぉ、そんな謝るなって!じゃあ早速明日、新しいの送っておくからさ。...てか、出席してくれる、ってことでいいんだよ...な?』
「はっ.....はい。喜んでっ.....」
『良かったー!あーホッとした...。俺の方こそ、突然連絡したのに...本当にありがとな。あん時はまだ...俺ガキだったけど...てか今も多分そんなに変わってねぇけど...でも、それでも一応、少しはマシになったと思う。だから余計に思うんだ、亜美ってすげぇや、って。子供生んで育てて...俺なんて自分が生む訳でも無いのに、嫁さん見てると毎日オドオドしちゃって...情けねぇよな』
「...そ、そんなこと無いっ...水野くんなら大丈夫だよ...」
『...そうかぁ?ま、亜美がそう言ってくれるなら。...てかそうそう、そっちはどう?子供達、小学生だっけ?』
「あ、うん...。今年から1年生。だんだん生意気になって来たけど、元気なのが一番、かな...」
『なら良かった.。旦那とかとはうまく...やってんのか?』
「...うん。健一さんは優しいし...慎二さんも。あと...この前ね、お父様も...無事に帰って来て...」
『...そっか。まぁ俺がとやかく言うことじゃないけど。亜美が幸せなら、俺はそれが一番...』
それから、他愛も無い会話を続けること約10分。
2人は久々の会話を終え、電話を切った。
亜美はそっと目を閉じると、一筋の涙が頬を伝った。
(私が.....幸せ、なら.....?)
貴之の声が余韻となって耳に残るそばで、それをかき消すかのように、亜美のスマホのバイブは断続的に鳴り続ける。
画面に目をやると、メッセージアプリが128件もの通知を示していた。
それらは全て、木下らによる『セイドレイの会』のトークルームに届いたものだったーー。
まさか、酒井によって招待状を膣内に捩じ込まれていたなどとは口が裂けても言えない。
『...ははっ!何かと思ったらそんなことかよ!全然気にすんなって...あんなんただの紙切れだし。てか、転んだんだろ?大丈夫か?怪我とかしてない...?』
「...うっ...うん.....本当に...ごめんなさいっ...」
亜美の瞳が、じんわりと涙で滲む。
あの頃と何も変わらない、貴之のそんな優しさが胸に痛い。
『...もぉ、そんな謝るなって!じゃあ早速明日、新しいの送っておくからさ。...てか、出席してくれる、ってことでいいんだよ...な?』
「はっ.....はい。喜んでっ.....」
『良かったー!あーホッとした...。俺の方こそ、突然連絡したのに...本当にありがとな。あん時はまだ...俺ガキだったけど...てか今も多分そんなに変わってねぇけど...でも、それでも一応、少しはマシになったと思う。だから余計に思うんだ、亜美ってすげぇや、って。子供生んで育てて...俺なんて自分が生む訳でも無いのに、嫁さん見てると毎日オドオドしちゃって...情けねぇよな』
「...そ、そんなこと無いっ...水野くんなら大丈夫だよ...」
『...そうかぁ?ま、亜美がそう言ってくれるなら。...てかそうそう、そっちはどう?子供達、小学生だっけ?』
「あ、うん...。今年から1年生。だんだん生意気になって来たけど、元気なのが一番、かな...」
『なら良かった.。旦那とかとはうまく...やってんのか?』
「...うん。健一さんは優しいし...慎二さんも。あと...この前ね、お父様も...無事に帰って来て...」
『...そっか。まぁ俺がとやかく言うことじゃないけど。亜美が幸せなら、俺はそれが一番...』
それから、他愛も無い会話を続けること約10分。
2人は久々の会話を終え、電話を切った。
亜美はそっと目を閉じると、一筋の涙が頬を伝った。
(私が.....幸せ、なら.....?)
貴之の声が余韻となって耳に残るそばで、それをかき消すかのように、亜美のスマホのバイブは断続的に鳴り続ける。
画面に目をやると、メッセージアプリが128件もの通知を示していた。
それらは全て、木下らによる『セイドレイの会』のトークルームに届いたものだったーー。

