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セイドレイ【完結】
第53章 落日
雅彦がどうしてここへ連れて来られたのか、その詳しい経緯は亜美には分からない。
今日、産婦人科を受診する予定だった亜美は、健一には嘘の用事を伝えて家を出ている。
土曜日だったこともあり、それなら健一は慎二と子供達を連れて水族館へ行くと言っていた。
つまり、その時家に居たのは雅彦一人。
恐らくそこで、何かがあったのだろう。


「…まぁ、思い付きで行動した割にはうまくいったなぁ。家にこのジジイしか居なかったのはラッキーだったぜ。お前の大事な大事なお父様だからな。これでも丁重に扱ってやったんだ。ありがたく思えよ?」

酒井の言葉に、亜美の全身を脱力感が襲う。
家に雅彦しか居なかったのが裏目に出たのか、しかしもし子供達が危険な目に遭っていたかもしれないと思うと恐ろしい。

追い討ちをかけるように、酒井が更に続ける。

「…俺はお前のお父様に、ただちょっと報告があっただけなんだよ。お前が妊娠したことと、そいつをちゃっちゃと堕ろしちゃいまーす、ってことをな」

「…う、嘘っ…待ってっ…」

「そしたらなぁ、何でか知らんがお父様顔真っ赤にして、俺の胸ぐら掴んできやがってなぁ。年寄りの割には意外と力があんだな。ま、だから数発ぶん殴ってやったんだよ。で、どーせなら特等席で、お前がぶっ壊れるとこ『もう一度』見せてやろうと思ってなぁ?」

もう一度。
酒井はきっと、あの夜のことを言っているのだろう。
地下室での、最後のあの夜のことをーー。

「あん時ゃオカマ野郎が血迷って放火なんかしやがったから、良いとこで邪魔が入っちまったが…ま、こうして役者も揃ったことだし、今日はその続きと洒落こもうぜ?お前の望み、俺達が叶えてやる」

「いっ…嫌っ……」

「ははっ…嫌じゃねぇよ。今更何言ってんだ?大好きなお父様に見せつけたいんだろ?お前は恐ろしい女だなぁ…インポ爺に向かってそんな残酷なことができちまうんだからな」

「おっ…お願いしますっ…もぅ…許してっ…」

「はいはい。とか言いつつ、マンコびちょびちょに濡らしてんのはどこのどいつだ?……ま、つーわけでっ!みんな待たせちまって悪ぃな!こっからは払った金の分、好き放題やっちまってくれー!!」

酒井のそんな号令に、男達は一瞬の躊躇を挟むものの、堰を切ったように一斉に亜美のカラダへと群がったのだったーー。
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