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セイドレイ【完結】
第53章 落日
酒井は亜美のそばへ近寄ると、パンパン、と手を叩き、慈母に酔いしれる観衆を牽制する。

「…はいはい、マザコンプレイはこんくらいにして。まだまだこっからが本番だぜー?」

すると酒井はおもむろに、床に座っている亜美の髪の毛を掴み、思い切り引き上げる。

「…痛っ!…うっ……うぅ…」

「おら、何ボケっとしてんだ?さっさと立てよ」

「ごっ……ゴメンナサイッ…」

亜美は酒井に言われるがまま、よろめきながらその場に立ち上がる。
そして2人は向かい合うと、酒井は右の拳を亜美の下腹部に押し当てる。

「…いっ……いやぁっ……」

腹の上に置かれた拳を見て、亜美は恐怖に怯える。
あたかも腹を殴ろうかとするそのポーズに、倉庫内の空気が再び緊張感に包まれる。

「…ケッ、ガキを簡単に堕ろそうとする奴のなーにがママだ?くだらねぇ。お前は人間以下の便器だろ?あ?」

酒井はそう言うと、ほぼ力を入れていない状態ではあるが、その拳でポン、と亜美の下腹部を軽く叩く。

「ひっ……やめっ……やめてっ……」

「んー?別に俺は今ここで思い切りぶん殴って、腹ん中のガキぶっ殺してもいいんだぜぇ?その方が手術代も掛からねぇしなぁ」

「イヤッ……ゴメンナサイッ……そっ…それだけはっ……」

亜美がそう懇願するも、酒井はその軽い殴打を繰り返す。
ポン、ポン、と酒井の拳が腹に触れる度、微かな振動が下腹部を伝い、全身へと広がって行く。

「…イ…イヤッ……あっ…ダメッ…お願っ…いっ……んっ…しまっ…すっ……」

ほぼ力が込められて無いとはいえ、一定のリズムで下腹部に刻まれる振動により、亜美の膀胱は圧迫され、尿意を催し始めていた。

いつ思い切り殴打されるやも分からぬ恐怖のせいもあるだろう。
こんな微々たる振動にも関わらず、一定間隔で刻まれるそれは徐々に亜美の臓器に揺さぶりをかけ、確実に全身を蝕んで行く。

そう、亜美のカラダは意に反して、感じ始めていた。
腹の子の命を絶やそうとする酒井の拳、そこから伝わる機械的な振動に、亜美は全く新しい危険な快感の片鱗を見てしまう。

そんな亜美の心情を見抜いているのか。
酒井はその静かな殴打をほんの少しずつ強めて行く。

「ダッ…ダメッ……アッ…アッ……アッッ……イヤッ……ダメッ…」
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