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セイドレイ【完結】
第53章 落日

ズン、ズン……と、次第に重くなって行く酒井の拳が、子宮の奥に響く。
気づけば亜美は、その大きな黒目を涙で滲ませていた。
「ウッ…ウゥッ……ヤメテッ……ゆるしっ……てっ……アッ!…アァッ……」
「…へへっ、お前はそうしてべソかいてんのがお似合いだぜ?痛てぇか?なぁ?それとも感じてんのか?どーなんだぁ?このまま殺っちまうかぁ?いらねぇんだろ?」
浅黒い酒井の腕が、真っ白な亜美の下腹部を叩く。
2人の体格差、そして絶対的な腕力差の前に、ただ涙を浮かべて咽び泣くしかない亜美の姿は、先程見せた慈母のような佇みから一転、ただひたすら怯えるだけのか弱い幼女のようにも見えた。
空間が本物の暴力に染まり始め、静観していた男達にも伝染する。
男達は、その残虐行為の予感に未知の興奮を覚えつつ、同時に後悔もしていた。
これはただの売春ビジネスとは一線を画すことに、この時ようやく気づいたのだ。
『あの少女A』とヤレるーー、そんな軽々しい誘い文句に釣られて、半ばノリで今日ここへ来てしまった。
付加価値のある高級ソープのようなものだと、そう思っていた。
それは、客を集めた木下や立山も同じだった。
しかし、今目の前で起きようとしているのは、紛れもない『事件』だ。
かつて少女Aがどんな境遇に置かれていたのかを、この瞬間に垣間見る。
そしてそんな犯行現場に、まさか一般人である自分達が立ち会うことになろうとは、誰も思っていなかったのだ。
その一方で、まるで悪夢を見せられているような感覚に陥っていたのは、雅彦だ。
まさにあの夜、亜美の膨らんだ腹に酒井の拳が振り下ろされたあの瞬間、雅彦は我を忘れて叫んだ。
結果、酒井の拳は寸止めされたのだが、それをきっかけに亜美が壊れてしまったという記憶がたった今、生々しく蘇ってくる。
傷つけ、愛した女が壊れて行く様を、再びただ黙って見ていることしかできないのかーー。
いや、このまま黙って見過ごす訳にはいかない。
亜美の腹に宿る命は……もしかしたら。
雅彦は歯を食いしばり、拳をギュッと握る。
自分に残された、最後の力を振り絞るように。
「(ワシは死んでもいいっ…だがせめてっ…!!)」
雅彦は、左右に構える木下と立山の隙をついて、掴まれていた腕を肩で振り解くと、酒井の背中を目掛けて突進する。
「…やめろおおおおっっ!!!!」
気づけば亜美は、その大きな黒目を涙で滲ませていた。
「ウッ…ウゥッ……ヤメテッ……ゆるしっ……てっ……アッ!…アァッ……」
「…へへっ、お前はそうしてべソかいてんのがお似合いだぜ?痛てぇか?なぁ?それとも感じてんのか?どーなんだぁ?このまま殺っちまうかぁ?いらねぇんだろ?」
浅黒い酒井の腕が、真っ白な亜美の下腹部を叩く。
2人の体格差、そして絶対的な腕力差の前に、ただ涙を浮かべて咽び泣くしかない亜美の姿は、先程見せた慈母のような佇みから一転、ただひたすら怯えるだけのか弱い幼女のようにも見えた。
空間が本物の暴力に染まり始め、静観していた男達にも伝染する。
男達は、その残虐行為の予感に未知の興奮を覚えつつ、同時に後悔もしていた。
これはただの売春ビジネスとは一線を画すことに、この時ようやく気づいたのだ。
『あの少女A』とヤレるーー、そんな軽々しい誘い文句に釣られて、半ばノリで今日ここへ来てしまった。
付加価値のある高級ソープのようなものだと、そう思っていた。
それは、客を集めた木下や立山も同じだった。
しかし、今目の前で起きようとしているのは、紛れもない『事件』だ。
かつて少女Aがどんな境遇に置かれていたのかを、この瞬間に垣間見る。
そしてそんな犯行現場に、まさか一般人である自分達が立ち会うことになろうとは、誰も思っていなかったのだ。
その一方で、まるで悪夢を見せられているような感覚に陥っていたのは、雅彦だ。
まさにあの夜、亜美の膨らんだ腹に酒井の拳が振り下ろされたあの瞬間、雅彦は我を忘れて叫んだ。
結果、酒井の拳は寸止めされたのだが、それをきっかけに亜美が壊れてしまったという記憶がたった今、生々しく蘇ってくる。
傷つけ、愛した女が壊れて行く様を、再びただ黙って見ていることしかできないのかーー。
いや、このまま黙って見過ごす訳にはいかない。
亜美の腹に宿る命は……もしかしたら。
雅彦は歯を食いしばり、拳をギュッと握る。
自分に残された、最後の力を振り絞るように。
「(ワシは死んでもいいっ…だがせめてっ…!!)」
雅彦は、左右に構える木下と立山の隙をついて、掴まれていた腕を肩で振り解くと、酒井の背中を目掛けて突進する。
「…やめろおおおおっっ!!!!」

